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MLB

守備シフトの規制に牽制の回数制限、そして“ロボット審判”――マイナーリーグで導入される実験的ルールの影響は?

宇根夏樹

2021.03.16

ストライク/ボールの判定は球審の仕事だが、年間3万回以上も誤判定があるという。ロボット審判ならそれはなくなる?(C)Getty Images

ストライク/ボールの判定は球審の仕事だが、年間3万回以上も誤判定があるという。ロボット審判ならそれはなくなる?(C)Getty Images

 1年のブランクを経て、5月に開幕を迎えるマイナーリーグでは、階級の違うリーグごとに今季からそれぞれ異なる新ルールが導入される。今月中旬、メジャーリーグ機構が正式に発表した。これは将来のMLBでの導入も見据えた試験的なものだ。

 メジャーに最も近い3Aでは、一回り大きなベースを使用する。従来の15インチ四方に対し、新ベースは18インチ四方。ベースが大きくなり、その分、塁間が狭まることで、盗塁をはじめとする走塁全体が活性化されることが狙いだ。同時に、走者と野手の衝突や接触の減少も目的としている。二塁や三塁におけるプレーだけでなく、打者走者が一塁で一塁手の足を踏む可能性も低くなるだろう。ただ、本塁の大きさはそのままなので、ストライクゾーンが広がるわけではない。

 2Aでは守備シフトが制限される。内野手は4人とも、投手が投げるまで、両足を内野の土の部分に置いておくことが要求される。この目的はヒットの増加だ。例えば、二塁手が内野の後方、ライトの手前に位置して二塁ゴロに仕留めていた当たりは、このルールによってライト前ヒットになる確率が上がる。現時点では前後のシフト制限にとどまるが、後半戦は二塁を挟んで左右に2人ずつの配置を義務付けるという、横方向のシフトを阻むルールが加わる可能性もある。
 
 1Aは、投手による牽制球を制限する。1A+では、牽制球を投げる際にプレートから完全に足を離すことが必要となる。一方、1A-の牽制球は1打席につき2度まで。3度目の牽制球を投げてアウトにできなかった場合、ボークとなって走者は次の塁へ進む。これらの目的は、盗塁の増加と試合時間の短縮だ。

 また、1A-の西地区では、15秒のピッチ・クロック(投球までの時間制限)を導入する。すでに2Aと3Aが実施しているピッチ・クロックは20秒なので、それよりもさらに短い。タイマーを外野に1つ、ホーム後方に2つ設置し、イニング間と投手交代の時間もきっちり計る。

 さらに、1A-の南西地区では、機械が人間に代わってストライク/ボールを判定する。いわゆるロボット審判だ。もっとも、見た目は従来と変わらない。捕手の後ろには人間の球審がいて、テニスやサッカーでも使用されているホークアイの判定を音声信号で受け取る。球審は自分の判断がホークアイと異なっていても従わねばならず、複雑な感情を抱くかもしれない。ロボット審判が広く採用されれば、捕手によるフレーミングのスキルも無用になりかねない。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
 

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