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MLB

大谷翔平に突き付けられた「63.0%」の壁。球威を生かすも殺すもストライク率次第

THE DIGEST編集部

2021.03.30

完全復活へ向けて突き付けられた課題。大谷は開幕までにクリアできるか。(C)Getty Images

完全復活へ向けて突き付けられた課題。大谷は開幕までにクリアできるか。(C)Getty Images

 メジャー4年目を迎える大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)にとって、オープン戦最終登板は残酷なまでに「現実」を突き付けられた結果となった。

 昨年世界一に輝いたロサンゼルス・ドジャースとの一戦。これまでのアリゾナでの試合と異なり、この日はドジャー・スタジアムで行われた文字通りの“実戦”登板だった。最強チーム相手にピッチングでの復調気配が漂う大谷がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、多くのファンが楽しみにしていたが、初回から苦しい試合となった。

 自慢の剛速球は指に引っかかってまともに制球ができず、初回だけで3つの四球。暴投の間に1点を失うと、2回には四球後の甘く入ったスライダーを捉えられて2ラン、カウント3-0から置きに行った速球も左翼席へ運ばれた。3回も3ランを被弾するなど、2.1回を投げて4安打7失点、5四球3奪三振という炎上劇。

 右手中指にマメができたことによる制球の乱れというのは間違いない。しかし、このスプリング・トレーニングでの大谷のスタッツにやや不安が残るものがある。

・3月5日アスレティックス戦(1.2回1失点):41球→ストライク率58.5%
・3月13日ホワイトソックス戦(2.1回5失点):58球→ストライク率56.9%
・3月21日パドレス戦(4.0回1失点):62球→ストライク率61.3%
・3月29日ドジャース戦(2.1回7失点):63球→ストライク率49.2%
 
 大谷のオープン戦4先発は0勝2敗、防御率12.19、10.1回、奪三振19、与四球10。ドジャース戦での炎上がなくとも防御率7.88だから数字は良くなかったが、パドレス戦で渡米後最速となる101.9マイル(約164キロ)を計時するなど、昨年と比較してスピードが復活しているのは光明だった。そして、イニング数を大きく上回る三振を奪っており、球威という面でも復活を印象付けていた。

 しかし一方で、制球力には不安を抱えていた。29日の試合前でも与四球率5.63(この試合を含めれば8.71)と荒れていて、この数字は昨年のメジャーワースト(4.06)よりもずっと悪い。そして、大谷の制球難を裏付ける数字が前述した各試合のストライク率だ。

 当たり前の話だが、打者はカウントが悪くなると打撃成績はどんどん悪化していく。つまり投手は、いかに早い段階で打者を追い込めるかがカギを握る。昨年のメジャー平均のストライク率は「63.0%」。やはり一線級の投手ともなれば、おおむねこの数字を超えてくるわけだが、果たして大谷はキャンプ全4試合とも平均を下回った。

 その中でも、“リアル二刀流”として「1番・投手」で出場したパドレス戦は4回1失点と好投していたが、この数字を見比べてみると、「ストライクをしっかり稼げた」ことでメジャー平均レベルでカウントを整えられたことが要因の一つかもしれない。

 投げているボールだけを見れば、大谷は間違いなくメジャーのエース級たる実力があるのは明らかだ。しかし、それを発揮するには、打者と勝負できる環境つまりカウントが整って初めて成立する。二刀流として復活の狼煙を上げるには、ストライクをいかにとるかにつきるだろう。

構成●SLUGGER編集部
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