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高校野球

“真の全員野球“が体現された2年ぶりの甲子園は、勝利至上主義から脱却する第一歩に

氏原英明

2021.04.02

これまでの高校球界に蔓延していた「少数精鋭主義」とは対照的な「全員野球」を見せてくれた東海大相模と明豊。新たな高校野球の形が垣間見られた大会だった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

これまでの高校球界に蔓延していた「少数精鋭主義」とは対照的な「全員野球」を見せてくれた東海大相模と明豊。新たな高校野球の形が垣間見られた大会だった。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 東海大相模の内野手に、背番号通りのレギュラーポジションについた選手はいなかった。大黒柱の主将・大塚瑠晏は離脱したが、適材適所に選手が活躍して10年ぶりに春の頂点に立った。

 背番号「4」ながら全試合でマスクをかぶった小島大河は言う。

「全員がどのポジション、どの打順になってもいいように準備をしてきました。自分たちとしては特別なことではないんです」

 全員野球の優勝と言えるかもしれない。
 
 ただ、今大会は多くのチームが数多くの選手を起用して戦っていた。開会式直後の開幕試合に勝利した神戸国際大付はこの1試合で15人も起用していたし、準優勝の明豊も、大会を通じて17人の選手を起用している。
 
 本来、高校野球の掲げる「全員野球」には嘘っぱちが多い。

「みんなで心を一つにして戦うのだ」とは言葉ばかりで、スタメンとベンチ、ベンチとスタンド応援の控え部員の温度差は激しい。「そういう悔しい思いをするのも必要」。そう語ったのは日本高野連の八田英二会長だが、甲子園が勝利至上主義によって、特定の選手だけが楽しむ舞台となりつつあることの証左だろう。

 目先の試合に勝とうとすれば、レギュラーの9人プラスアルファを強化する方が勝ちにつながる。全員の成長を待っている暇はない。これまでの高校野球はそういうものだった。

 そんな“強者”さえ良ければいいという思考が今大会で変化した背景には、昨年1年間の経験が絡んでいるだろう。
 

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