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プロ野球

「ダメならセットに戻ればいいやん」藤浪晋太郎はなぜフォーム改造に取り組んだのか。試行錯誤の末に掴んだ“自信”

チャリコ遠藤

2021.04.15

納得するフォームを求めて、試行錯誤を繰り返してきた藤浪。今季も制球面に課題は残しているものの、そのピッチングからは自信が感じ取れる。(C)THE DIGEST

納得するフォームを求めて、試行錯誤を繰り返してきた藤浪。今季も制球面に課題は残しているものの、そのピッチングからは自信が感じ取れる。(C)THE DIGEST

 その夜、藤浪晋太郎は「2人」いたのではないか。そう思えた。

 4月9日、敵地の横浜スタジアム。7回4安打7奪三振2失点の好投で今季初勝利を飾った右腕は「粘ってなんとか立て直したかなというのが感想ですね」と、昨年8月21日のヤクルト戦以来231日ぶりとなる白星を、控えめに振り返った。

 たしかに序盤は荒れた。初回は2四球を献上してピンチを招き、3回も1死満塁と窮地に追い込まれた。ただ、ギリギリのところで痛打は許さない。初回、3回といずれも最後は巧打者である宮崎敏郎をカットボールと直球で三振に斬って無失点で切り抜けた。

「なんとか立て直して…」の言葉には、走者を背負いながら要所を締めたという意味も多分に含まれるはずだが、中盤からはある「変化」も見て取れた。藤浪は4回からフォームをセットポジションに変更して腕を振ったのだ。

「ちょっと(フォームの)タイミングが合っていないと自分で思っていたので、それだったらセットのほうがタイミングが合いそうだと思ってセットにしました」

 今季、藤浪が開幕前から熱心に取り組んできたのが、ワインドアップから投げ込む新フォームの固定だ。投球の間、勢い、リズム……と数多くのメリットを求めて、年明けからチャレンジしてきた。

【動画】甲子園を沸かせた藤浪晋太郎と西武・森友哉の熱き大阪桐蔭対決はこちら!
 近年は不振に苦しみ、フォームも試行錯誤を重ねたなかで、昨季の終盤にはセットポジションで「“こういう道で行く”というのが自分の中で定まった」と明かすなど、たしかな手応えを得ていた。その上であえて「振りかぶる」という決断を下したのだ。

 直近2年間でわずか1勝と立場上、崖っぷちに立たされた男にとって、一見するとリスクにしか映らないフォーム改造。だが、藤浪本人は引き返せる“場所”があることのアドバンテージを強調していた。

「リスクも承知の上で挑戦してます。逆に言えば、セットである程度の自信が持てた。いまはここなら立ち返れるっていうところがあるんです。『ダメならセットに戻ればいいやん』ぐらいの気持ちで。その上でワインドアップのメリットを求めてやっています」
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