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MLB

“2000年代最強捕手”バスター・ポージーが現役引退! 日本球界にも影響を与えた「コリジョン・ルールの生みの親」

THE DIGEST編集部

2021.11.04

MVP1回、世界一3回を成し遂げた名捕手ポージーが現役に別れ。その存在は実績だけでなく、球界をも変える偉業にも彩られていた。(C)Getty Images

MVP1回、世界一3回を成し遂げた名捕手ポージーが現役に別れ。その存在は実績だけでなく、球界をも変える偉業にも彩られていた。(C)Getty Images

 まさに青天の霹靂とも言えるアナウンスが球界に響き渡った。 

 スポーツ最大手メディア『The Athletic』は現地時間11月3日、サンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ポージーが現役引退することを決めたと報じた。現在34歳のポージーは来季2200万ドル(約26億円)の球団オプションが残っており、また今季もオールスターに選出されるなど実力十分と思われていただけに、この決断には現地も騒然としている。 

 2008年ドラフト全体5位でジャイアンツに指名されたポージーは翌年にメジャー初昇格。翌10年には正捕手の座をつかんで新人王を獲得すると、同年はサンフランシスコ移転後では球団初&56年ぶりの世界一の原動力になった。そして、12年にはナ・リーグ捕手では70年ぶりの首位打者となる活躍でMVPに選ばれ、以降もシルバースラッガー4回、オールスター選出7回と“2000年代最強キャッチャー”として君臨。 

 昨季はコロナ禍とあって出場辞退したが、迎えた今季は打率.304、OPS.889と猛打が復活し、球団最多107勝を挙げたチームの中でも光り輝く存在感を発揮していた。実働12年、通算1500安打は殿堂入りには難しいラインではあるものの、積み上げてきたキャリアはクーパーズタウンの選手たちに引けを取らないものがあるだろう。 

 そして何より、ポージーは未来永劫、アメリカだけでなく日本においても語り継がれるほどの“偉業”を成し遂げた人物でもある。今ではおなじみとなった「コリジョン・ルール」誕生のきっかけとなったのが、他でもない彼が犠牲になったからだ。 

【動画】球史の転換点! ポージーが受けた“衝撃”タックルがこれだ
 
 2011年5月25日、前年に新人王を獲得したチャンピオンチームの若手捕手ポージーは、相手走者から相撲のぶちかましのような危険なタックルを受け、左足首靱帯断裂などの故障で残りシーズンを全休することになった。未来有望な若者がキャリアの危機になりかねない怪我を負ったとあって、それまでホーム上でのプレーに楽観的だったメディアやファンも考えを改めることになった。 

 同じようにNFLでも脳震とうの危険性が叫ばれたことから、MLBでは2014年よりホームの衝突禁止が明文化された。通称、「バスター・ポージー・ルール」と呼ばれることになる偉大な変革だった。日本では2016年に導入されたこの「コリジョン・ルール」。制定のいきさつは異なるものの、MLBのやり方に(良くも悪くも)“右へ倣え”のNPBが危険防止の取り組みを素早く採用できたのも、ポージーの一件がなかったら時間がかかった可能性は高いだろう。 

 ポージーがきっかけとなって生まれた「コリジョン・ルール」は、選手の故障防止につながってキャリアが延びやすくなっただけでなく、捕手に求められてきた資質にも影響を及ぼした。それまでは、タックルなどにも耐えられる頑健な肉体も必要な条件だったが、今では小柄な選手でもキャッチャーを務めあげることはできるし、例えばJT・リアルミュート(フィラデルフィア・フィリーズ)のような“走れる捕手”というジャンルも誕生している。  

 仮にポージーが今後、殿堂入りできなかったとしても、彼の輝きは忘れることはないだろう。“球史を変えたキャッチャー”として、永遠に名前が残るからだ。 

構成●THE DIGEST編集部 
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