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イチローと大谷翔平。日本が生んだ2人の天才はいかにしてMLBの「頂点」を極めたのか?<2021百選>

出野哲也

2021.12.31

MLBで歴史的な快挙を達成した大谷(左)とイチロー(右)。多士済々のリーグで彼らが偉大な記録を残せた要因に迫る。(C)Getty Images

MLBで歴史的な快挙を達成した大谷(左)とイチロー(右)。多士済々のリーグで彼らが偉大な記録を残せた要因に迫る。(C)Getty Images

 2021年のスポーツ界における印象的なシーンを『THE DIGEST』のヒット記事で振り返る当企画。今回は、日本が生んだ天才であり、互いにMLBのMVPとなったイチローと大谷翔平を好対照な頂点を極め方を取り上げる。

記事初掲載:2021年11月20日

――◆――◆――

 2019年の春にイチローが引退した時、彼を超えることはおろか、一時的にせよ肩を並べて語られるような日本人選手が現れると想像するのは難しかった。

 27歳で海を渡ってメジャー通算3089安打、10回のゴールドグラブ受賞とオールスター出場、そして2001年に新人王と同時に獲得したMVP……。そのどれを取っても、「日本人」という枠を超越していた。
【動画】全46本塁打を一挙振り返り!歴史を築いた大谷翔平の活躍をプレーバック

 サイ・ヤング賞ならば、20年にダルビッシュ有と前田健太がともに2位の得票数を集めたように、いずれ誰かが取れるかもしれないという期待は感じられる。だが、MVPとなると、可能性はほとんどないように思われた。

 しかしそれからわずか2年後、大谷翔平がイチロー以来20年ぶり2人目となる、日本人選手によるMVP獲得を実現させた。シーズン終盤で打撃不振に陥ったとはいえ、投打二刀流のどちらも好成績を残しているインパクトは甚大。イチローの新人王とMVPのダブル受賞は史上2人目の快挙だったが、「二刀流のMVP」はもちろん初となる。
 
 ただしこのふたり、右投げ左打ちの日本人以外の共通項はあまりない。体格からしてイチローは身長180センチ、体重79キロ、大谷は193センチ、95キロ(実際はおそらくそれ以上)。ポジションも異なるし、何より打者としてのタイプは正反対と言っていいくらいだ。

 打撃・走塁・守備のすべてに優れていたイチローだが、もちろん最大の特徴は史上有数の安打製造機だった点だ。10年連続で打率3割と200安打をクリアし、リーグ最多安打は7回。04年の年間262安打は、今後破られる可能性が極めて低い記録のひとつである。

 そして全安打数の実に80%以上が単打という、絵に描いたようなシングルス・ヒッターでもあった。打撃練習では柵越えを連発していたのは有名で、記者の間ではホームラン・ダービー出場を望む声もあったが、実戦においてはコンタクトを重視。そのため、シーズン2ケタ本塁打を記録したのは3度しかなく、20本を超えた年もない。

 折しも、デビュー1年目でMVPに輝いた01年、MLBは薬物で肉体を巨大化させたスラッガーたちがホームランを打ちまくる「ステロイド時代」の真っ只中だった。その渦中にあってイチローは、鮮やかな流し打ちや快足を生かしての内野安打、華麗な守備など対極のプレースタイルで見る者に鮮烈な印象を与えた。言わば、イチローは時代に逆行する孤高の存在だった。
 
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