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MLB

大谷翔平は正当評価をされていない? 米記者がジャッジ優位のWARにある“矛盾”を指摘「ショウヘイの影響力を考慮していない」

THE DIGEST編集部

2022.10.08

大谷(左)とジャッジ(右)はともに歴史的なハイパフォーマンスを披露した。だからこそ、正当な評価を見出したいところだが…。(C)Getty Images

大谷(左)とジャッジ(右)はともに歴史的なハイパフォーマンスを披露した。だからこそ、正当な評価を見出したいところだが…。(C)Getty Images

 メジャー5年目の今季に二刀流の天才は、またしても声価を高めた。ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平である。

 その凄みは投打のスタッツが如実に物語る。打っては打率.273ながら、およそ投手のそれではない34本塁打、95打点、OPS.875をマーク。投げても自己最多の15勝を挙げ、防御率2.33、奪三振率11.87とリーグトップクラスのハイアベレージを残した。

 今季はベーブ・ルース以来104年ぶりの「2桁勝利&2桁本塁打」に加え、「シーズン30本塁打&2桁勝利」「投打でのダブル規定到達」という史上初の金字塔も打ち立てた。そんな活躍は、投打のバランスを考えれば、満票MVPとなった昨季よりも真価を発揮したと言える。

 もはや必然的に2年連続のアメリカン・リーグMVPへの期待も膨らむのだが、今季は“競争相手”が残したインパクトも強烈だ。ニューヨーク・ヤンキースの主砲アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)のそれである。

 夏場もハイペースを維持したヤンキースの主砲は、61年前にロジャー・マリスが打ち立てたア・リーグ年間最多本塁打記録(61)を見事に更新。最終的に三冠王こそ逃したものの、打率.311、62本塁打、131打点、OPS1.111、長打率.686と異次元的なスタッツをマーク。その圧倒的な打棒で球界全体に小さくない娯楽を提供した。

 ゆえに大谷との熾烈なレースにおいては、ジャッジがリードしているという意見はある。実際、昨今のMVP投票において有益とされてきた指標「WAR」で単純に比較をすれば、10.6(bWAR)を記録するジャッジが大谷の9.6を凌駕。米メディア『The Athletic』の取材では、2010年のナショナル・リーグMVPのジョーイ・ボットーが、「とくに50対50という今回のような難しい問題の場合は、WARは重要になると思う」とし、30歳の怪物スラッガーに太鼓判を押してもいる。
 
 一方で、球界全体に定着しつつあるWARが大谷の価値を正しく評価できていないという見方もある。いったいなぜか? それは数値を算出する際に、守備負担の違いを考慮するためにポジションごとの補正が加えられているからだ。

 WARは捕手や遊撃手が大きく数値加算される一方で、比較的に負担の小さいとされる左翼手と右翼手、一塁手、先発投手の評価は低く「0」。大谷が登板日以外に“主戦場”としてきた指名打者に至っては無条件でマイナス評価が下されるのだ。

 今季の大谷はこのマイナス評価によって1.7ポイントを損失している。仮にこれを加算すると、ジャッジの10.6を上回る11.3になる。この結果は、投手と指名打者を兼務する偉才の「価値」を数値化しきれていないとも言える。米放送局『CBC』のベテランリポーターであるジョナサン・シェアー氏は、「MVPを選ぶのは難しい決断だ」とし、WARの問題に持論を投げかけている。

「たしかにジャッジは歴史的な本塁打とWARで優位に立っている。だが、そのWARはショウヘイを指名打者でしか評価せず、投打2つの役割からチームが得る影響力を十分に考慮していない。さらにショウヘイは歴史上で誰もやってのけられなかったことをいくつもやってみせている」

 無論、ジャッジと大谷の活躍はともに球史に永遠に残るほど記録的であり、MVP争いもかつてないほどの接戦ではある。だからこそ、多くの識者たちはWARの“矛盾”を指摘せずにはいられないのだろう。

 現在の論争を見る限り、どちらが栄冠を手にしても、小さくない波紋を広げそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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