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プロ野球

2戦連続で裏目に出たマクガフの投入と、一変した“5番の差”――。手詰まりで王手をかけられたヤクルトに策は?<SLUGGER>

氏原英明

2022.10.30

打線は完全に抑えきられ、投手陣も機能しない。王手をかけられたヤクルト高津監督は何を思うのか。写真:田中研治

打線は完全に抑えきられ、投手陣も機能しない。王手をかけられたヤクルト高津監督は何を思うのか。写真:田中研治

 8回裏のヤクルトの攻撃中。一塁側ブルペンで投球練習をする背番号「37」を見て、首を傾げた。

 僅差とはいえビハインドの試合展開。

 ここで前の試合で黒星がついたばかりのクローザー、スコット・マクガフを投入するとは無謀ではないかと思えたのだ。

 もちろん、高津臣吾監督の意図は理解できる。0対1の状態のまま9回裏を迎えて、逆転の空気を作るという狙いだろう。

 2勝2敗1分けで迎えたこの試合、先に王手を取られたくはない。ましてやこの日、相手はエースの山本由伸が第1戦での故障で登板を回避。それだけに、是が非でも勝ちたいというのは理解できる。

 しかし仮に試合を落とした場合、残りの2試合を勝たないと日本一を取れないと考えると、マクガフは3連投しなければいけないかもしれないのだ。絶対的クローザーといえど、ビハインドの展開で投入するのは無謀ではないか。そう思えて仕方がなかった。

 指揮官がそう考えるくらいに、この日のヤクルト打線はシリーズ前半の勢いが断たれてしまった空気だった。

 1回裏、先頭の塩見泰隆がセンター前ヒットで出塁したものの、安打はこれが最後だった。2番の青木宣親が併殺打に倒れると、オリックス投手陣の後塵を拝する状態になってしまったのだ。

 相手先発の山崎福也は変化球を駆使して的を絞らせないピッチング。4回裏に山田哲人、村上宗隆の連続四球などで好機をつかんだものの、あと一本が出なかった。

 その後は第4戦のように、相手の継投策になす術なく打線を封じられてしまっていた。
 
 そんな展開だったから、どこかで打開策を練りたい。チームを勢いづける「何か」が欲しかったのだろう。その一手が9回のマクガフ投入だった。

 しかし、9回表、マクガフは先頭の安達了一にライト前ヒットを許すと、続く・紅林弘太郎の送りバントの処理に入ったところ、一塁へ悪送球。カバーリングの遅れもあって、一塁走者が長躯ホームインしてしまった。これは、マクガフが第5戦の9回にも犯したミスのデジャブのような形で、1点を献上してしまった。さらに山﨑颯一郎の代打・西野真弘も犠牲フライを許して、2点目を失ったのである。

 この後、マクガフは1番の太田椋に四球を与えたところで降板。指揮官の期待は水泡に帰し、ただマクガフの疲労をためるだけとなってしまった。

 こうも大きくシリーズの流れが変わるのか。マクガフ投入の失敗を見てそう思わずにはいられない。

 シリーズの序盤はヤクルトが幸先よくスタートを切った。
 
 第1戦目は相手エースの山本を打ち崩した。5番のオスナが3安打3打点を挙げる活躍でチームに勢いをつけると、第2戦では3点ビハインドの9回裏に、内山壮真が起死回生の同点3ラン。そのまま延長12回引き分けに持ち込んだ。

 さらに第3戦は7対1で大勝して、シリーズを優位に進めたはずだった。

 ところが、第3戦の9回に喫した1失点が大きかった。

 7点をリードして9回裏、1死を取ったところで小沢怜史を登板させたが、これが誤算。中川圭太、杉本裕太郎、西野に3連打を浴びて1失点したのだ。なかでも、本来は主軸ながら、不調から打順を下げられていた中川、杉本に快音を響かせたのは痛かった。
 
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