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MLB

“下克上”でワールドシリーズに進出したフィリーズとエンジェルスの「決定的で絶望的な差」<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.11.03

トレード期限の8月2日にエンジェルスからフィリーズへ移籍したマーシュはワールドシリーズの大舞台で躍動している。(C)Getty Images

トレード期限の8月2日にエンジェルスからフィリーズへ移籍したマーシュはワールドシリーズの大舞台で躍動している。(C)Getty Images

「あらゆるリソースを駆使して得た情報を分析、及び理解して、選手の獲得や育成に活用しています」サム・ファルド(フィリーズGM)

 今年のワールドシリーズは、アメリカン・リーグ最高勝率のアストロズ対ナショナル・リーグのワイルドカード3位のフィリーズの対決となった。第3戦を終えてフィリーズが2勝1敗。両チームが持ち味を発揮し、すでに好勝負となっている。

 アストロズが過去9年で7度もプレーオフに出場し、そのうち4度もワールドシリーズに出場している「絶対王者」であるのに対し、ナ・リーグ東地区でブレーブス、メッツの後塵を拝して地区3位でプレーオフに出場したフィリーズは、プレーオフ出場全チームで最も「格下」と見られていたが、(日本風に言えば)「下剋上」でワールドシリーズに進出した今となっては、誰もそんなことを思わなくなっている。

 そもそも、フィリーズの正体は、有力フリー・エージェント(FA)を買い漁って、短期間で競争力を上げた「金満球団」である。レギュラーシーズン終了時点の総年俸はMLB4位の2億4200万ドルで、1ドル147円換算なら実に355億円を超える。
 ちなみに、エンジェルスは1億8000万ドルで、アストロズの1億7900万ドルとほとんど変わらない。大谷翔平を中心にMLBを見ている方々にとっては、「何でなん?」と疑問を投げかけたくなるだろうが、エンジェルス以上に金を費やしながら、プレーオフに出場できなかったチームも存在する(レッドソックスとホワイトソックス)。

 フィリーズとエンジェルスに絞って言及すると、両者を分けているのは、もう単純に「お金の使い道」だけである。

 フィリーズの最高年俸選手は、リーグ優勝決定シリーズでMVPに輝いたブライス・ハーパーとエースのザック・ウィーラーの2600万ドルで、捕手のJT・リアルミュート(2387.5万ドル)、スライディングキャッチで何度もチームを救っているニック・カステヤノス外野手(2000万ドル)と続く。

 そう、フィリーズにはマイク・トラウト外野手(来季年俸3545万ドル)やアンソニー・レンドーン内野手(同3800万ドル)、そして大谷翔平(3000万ドル)のような「3000万ドル(44億円)超え」の選手はいない。その代わり、1000万~2000万ドル台の主力選手が数多くいるわけだ。

 理想的なチーム構築法は、アストロズのように生え抜きの選手を主力として育成することだろう。それを達成するには時間が必要なので、オーナーも編成部門も長期的な視野を持たなければならない。
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