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侍ジャパン

【WBC】「監督とは“人生かし”」――選手の個性を信じ、ともに物語を紡ぎ上げる栗山英樹監督の哲学<SLUGGER>

氏原英明

2023.02.27

侍ジャパンを率いる栗山監督。その指導者哲学は「人を生かす」というベースの上に成り立っている。写真:梅月智史

侍ジャパンを率いる栗山監督。その指導者哲学は「人を生かす」というベースの上に成り立っている。写真:梅月智史

 春の日差しが差し込んでくる一室で、栗山英樹監督が持論を展開した。

「一番その選手らしい、この選手じゃなきゃダメだというのを引き出していきたいと思っているだけなんですよね」

 2017年、沖縄県名護市で行われていた日本ハムの春季キャンプ。日本シリーズを制覇した翌年のことだった。栗山監督に采配哲学を問うたところ、そんな言葉が返ってきた。

 その栗山監督が、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンを率いる。21年限りで、10年間指揮を執ったファイターズの監督を退任。昨年、侍ジャパンの監督に就任した。

 改めてファイターズ時代を振り返ると、栗山監督は従来の「監督像」を変えた指揮官だった、と言えるのではないだろうか。

 ベンチで「監督然」として構えることもなければ、練習中に大きな声を張り上げてノッカーを務めることもない。口から出てくるのは運命論や人生についての話ばかりで、監督というよりは「先生」と呼んだ方がしっくりくる。

 大谷翔平の二刀流に象徴されるような突拍子もない采配は、時に批判を浴びることもあったが、栗山監督には常に確固たる信念があった。

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 その信念とは、「その策が選手のためになるのか」というものだ。

「よく言う話なのですが、困った時には勝ちたいし、何とかしたいという気持ちはあるけど、僕には『選手のために』という想いがある。選手のためになれば、チームのためになると本当に思っているので、『(この采配は)選手のためになるんですか』、『選手のためにならないんですか』というのを自分に問いかけて、その結果、選手のためになると判断できたら、どんな無茶苦茶なことであっても実行します」

 采配の先にあるゴール地点は勝利だ。そのために、選手が最も力を発揮しやすい場所を用意する。それが「選手のためになる」の本当の意味だ。

 栗山監督はこうも言っている。

「選手にはこの数字を出してくださいというのは思っていなくて、チームが優勝するために、例えば投手にコントロールのいい選手が必要、球威がある投手が必要など、いろいろありますよね。その中で『あなたはどの部分でうちの勝利に貢献するつもりですか』というのを選手に求めているんです。送りバントが苦手な打者は野球選手としてはそれができるようにならないといけないですが、組織としては、それができる選手を作って起用すればいい。持ち味がどれであるかを明確にしてあげることが、選手の将来にもつながっていくわけですから」

 勝つことを義務付けられた指揮官は、どうしても自分の思うような勝ち方、得点パターンを作りがちだ。ところが、栗山監督はチームに合った勝ち方、「らしさ」を追求して勝利を目指していくスタイルを貫いている。

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