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NBA

【NBAデュオ列伝】雑草魂のスプリーウェルとエリートのヒューストン。対照的な2人がNYでタッグを組むまで|前編

出野哲也

2020.11.11

2人はほぼ同世代でポジションも一緒だったが、血の気の多いスプリーウェル(左)に対してヒューストン(右)は真面目と、キャラクターは対照的だった。(C)Getty Images

2人はほぼ同世代でポジションも一緒だったが、血の気の多いスプリーウェル(左)に対してヒューストン(右)は真面目と、キャラクターは対照的だった。(C)Getty Images

■叩き上げのスプリーウェルとエリート街道を歩んできたヒューストン

 潤沢な補強費をドブに捨て続けるGM。猫の目のように変わり続けるヘッドコーチ。高給をもらいながら自分本位のプレーに走る選手たち。そしてNBA最悪と(自分以外の)誰もが認めるオーナー……。名門と呼ばれたニューヨーク・ニックスは、ここ数年迷走を続けるばかりだ。

 最後にニックスが光を放ったのは、20年以上も前になる。ロックアウトの影響で短縮シーズンとなった1998-99シーズン、ニックスはプレーオフ第8シードからNBAファイナルにまで駆け上る奇跡的な快進撃を演じた。その“ミラクル・ニックス”を演出した2人の選手、ラトレル・スプリーウェルとアラン・ヒューストンが、今回の主人公である。

 スプリーウェルは92年にドラフト24位でゴールデンステイト・ウォリアーズに入団した。指名順位からもわかるように、さほど注目されていた選手ではなかった。ウォリアーズにはティム・ハーダウェイ、クリス・マリン、ビリー・オーウェンスら優秀なウイングプレーヤーが多数いたこともあり「これ以上ガードを増やしてどうするんだ」と指名に懐疑的な視線を向ける者も少なくなかった。
 
 それだけに、スプリーウェルが1年目から大活躍した時には多くの人が驚いた。プロ入り前から評価の高かったディフェンスだけでなく、攻撃面でも平均15.4点。並外れたスピードを生かし、インサイドに飛び込みレイアップを決めるかと思えば、アウトサイドでも安定したシュート力で得点を重ねた。2年目は平均得点21.0に加え、3ポイント成功数141本、平均スティール2.20と2部門でリーグトップ10入り。出場時間3533分はNBA全選手を通じて最多と、驚異的なスタミナも見せつけた。オールスターでもスターターに選ばれ、早くも「マイケル・ジョーダン以来最高のシューティングガード」とまで呼ばれるようになった。

 ヒューストンはスプリーウェルの1年後、93年のドラフト11位でデトロイト・ピストンズに入団した。父ウェイドの下でプレーしたテネシー大時代は、4年連続で平均20点以上。通算2801点は同校の得点記録だけでなく、サウスイースタン・カンファレンス史上でも伝説のピート・マラビッチに次ぐものだった。そのシュート力はレジー・ミラーと比較され、「1対1で僕を止められる選手はそうはいないよ」と自負するほどだった。

 プロ入り当初はやや戸惑いを見せたが、2年目は平均14.5点、3ポイント成功率42.4%、ハーフで7本の3ポイントを決める新記録を達成するなど、次第に実力を発揮しはじめた。完全にスターターに定着した95-96シーズンには平均19.7点をあげ、初めて出場したプレーオフでも平均25.0点。シーズン終了後にはFAとなり、7年間5600万ドルの契約でニックスに迎えられた。
 

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