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NBA

バスケ選手の父はコート上で帰らぬ人に…クリッパーズの万能戦士ニコラ・バトゥームの知られざる過去<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.10.19

フランス代表のバトゥームの知られざる過去とは。(C)Getty Images

フランス代表のバトゥームの知られざる過去とは。(C)Getty Images

 この夏、ロサンゼルス・クリッパーズと2年間の契約延長にサインしたニコラ・バトゥーム。

 2008年のドラフトでヒューストン・ロケッツから1巡目25位指名を受け、トレード先のポートランド・トレイルブレイザーズでデビューした彼のNBAキャリアは、15年目に突入する。

 フランス代表でも数々のメダルを獲得したフォワードも今年の12月で34歳。その彼が先日、フランスのテレビ局カナル・プリュスのインタビュー番組『En aparté 』に出演した。

 これはスタジオ内に作られた部屋の中で、ゲストが自分の家でくつろぐようなリラックスムードの中、ナレーターの質問に答えていくという番組。

 この中でバトゥームは、これまで彼や家族にとって「タブーな話題」とされてきたという父の死に触れつつ、自身が長い間抱えてきたというメンタルヘルスの問題について赤裸々に語った。

 プロバスケットボール選手だった父リシャールは、2歳半だったバトゥームと彼の母親がスタンドで観戦していた試合中、コート上で倒れて、帰らぬ人となった。死因は動脈瘤の破裂だった。

 母との間でも蒸し返すことはしなかったというこの時の記憶に、否が応でも対面させられたのが、NBAドラフトにエントリーした時だった。
 
 球団から健康診断を求められ、「親族に心臓病で亡くなった者はいるか」というチェック事項にぶち当たったときは、検査がすべて終わって専門医からのゴーサインが出るまで、生きた心地がしなかったという。

 次にバトゥームが苦悩に苛まれたのは、16年に息子のエイダンを授かってから。息子の姿が幼少期の自分の思い出と重なり、彼が、自分が父の死を経験した2歳半をやり過ごして3歳になるまでの間、試合に行くときには毎回、恐怖心を抱えていたという。

 家を出るときの彼の様子を見て、妻はまるでバトゥームが「試合に行ったら2度と生きては帰れない」と思っているように感じたというが、実際に彼は、「自分も父のように命を落とし、家族を置き去りにすることになるのではないか」という恐怖を抱えながら試合に臨んでいたのだった。

 観客席でその瞬間を目撃した自分と母親のイメージがだぶるため、妻にも「試合には来ないでくれ」と頼んでいたそうだ。

 15年のオフにシャーロット・ホーネッツに移籍し3年間は、全試合に先発して平均2桁得点をマークしていたが、徐々に出場時間が減り出し、5年目になると、コートに立ったのは22試合のみ。平均23分のプレータイムで3.6点と、パフォーマンスは目に見えて落ち込んだが、その頃の彼は、試合の前になると辛くて涙を流すような日々を送っていたのだった。
 
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