大雨の予報で試合開催が危ぶまれたものの、第1試合で中断はありながら予定通り4試合が行われた夏の甲子園、大会第6日。プロのスカウト陣から最も注目を集めていたのが第3試合に登場した未来富山のエース・江藤蓮（3年）だ。4月に行われたU-18侍ジャパン強化合宿に招集され、紅白戦でも好投を見せていたサウスポーである。しかし中盤に高川学園打線につかまり、5回1/3を投げて8失点（自責点7）で降板し、チームも5対8で敗戦というほろ苦い全国デビューに終わった。

　富山大会の決勝からコンディションが上がらなかったということだったが、ストレートの勢いはイニングを追うごとに落ちているように見え、長打を浴びるシーンも目立った。立ち上がりから浮くボールが多く、細かいコントロールにも課題が残る印象だ。

　それでも序盤は最速144キロをマークするなど指にかかった時のストレートは威力があり、鋭く変化するスライダーなどを駆使して6個の三振を奪うなど、実力の片鱗を見せたことも確かだ。貴重な本格派左腕だけに、ドラフトに向けてその動向には引き続き注目が集まることになるだろう。

　3年生の野手でアピールしたのが松井蓮太郎（豊橋中央・捕手）だ。第2打席でセンター前、第3打席でレフト前に弾き返して2安打をマーク。ファーストストライクからフルスウィングすることができており、強く振り切って広角に打てる打撃が光る。守備でもイニング間のセカンド送球で度々素早いスローイングを見せ、日大三の機動力を抑止した。打てる捕手の素材として面白い存在と言えそうだ。

　江藤と松井以外ではこの日も下級生の活躍が目立ち、投手では柴田蒼亮（県岐阜商2年）、木下瑛二（高川学園2年）、野手では中込大（未来富山2年・捕手）、福島陽奈汰（東海大熊本星翔2年・遊撃手）、田中諒（日大三2年・一塁手）の名前が挙がる。 　柴田は173㎝と小柄ながら全身を大きく使ったフォームでストレートは常時140キロを超え、9回を一人で投げ抜いて3失点（自責点2）で完投勝利をあげた。高校から直接プロというタイプではないように見えるが、大学や社会人で力をつければ将来的にはドラフト指名の可能性もありそうだ。

　木下は股関節の柔軟性が目立つフォームで躍動感があり、ストレートは最速146キロをマーク。まだ良いボールとそうでないボールの差は大きいが、全体的なフォームのバランスも良く、順調に成長すれば来年には150キロの大台も見えてくるだろう。中込は第1打席でいきなりライトポール際への先制ツーランを放つと、その後も快音を連発して3安打を記録。鋭い振り出しは素晴らしいものがあり、逆風でもフェンスを越えるパワーはとても2年生とは思えない。守備はそこまで突出したものはないが、2つの盗塁阻止を記録するなど送球の正確性も光った。

　福島は軽快な守備とリストの強い打撃が光るショート。守備では時折打球と衝突する点、打撃では少しタイミングのとり方がせわしない部分は気になったものの、打てるショートとして面白い存在になりそうだ。田中は180㎝、92㎏の体格を誇る右の強打者。第2打席でセンター前へのタイムリーヒットを放つと、8回には値千金の決勝ソロをレフトスタンドに運んで4番としての役割を果たした。打つ以外は目立たないが、貴重な右の強打者タイプだけに今後も注目したい素材である。

構成●THE DIGEST編集部

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