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高校野球

【甲子園プロ注目の選手たち】投手ではドラフト1位指名が有力視される健大高崎の石垣、 野手は超高校遊撃手の神村学園・今岡に熱視線<SLUGGER>

西尾典文

2025.08.05

センバツでは脇腹を痛めていた石垣。最後の夏はエンジン全開の投球を期待したい。写真:THE DIGEST写真部

センバツでは脇腹を痛めていた石垣。最後の夏はエンジン全開の投球を期待したい。写真:THE DIGEST写真部

 いよいよ今日から開幕する夏の甲子園。今年の高校生ドラフト候補は大学や社会人に進むことを希望する選手が多いと言われているが、それでも甲子園でのプレーぶりが楽しみな選手は少なくない。注目のドラフト候補について、プロ志望の可能性が高い選手を中心に紹介したいと思う。

 今大会最大の注目選手と言えばやはり石垣元気(健大高崎・投手)になるだろう。センバツでは脇腹を痛めていた影響で本調子ではなかったものの、それでも150キロを超えるスピードボールを連発し、改めてポテンシャルの高さを示した。

 春の関東大会では東海大菅生の強力打線を相手に4回を投げて被安打1、4奪三振で無失点と圧巻の投球を披露。この時の最速は球場表示で156キロ、筆者のスピードガンでも155キロをマークし、ストレートはすべて150キロを超えていた。

 スピードに注目が集まることが多いが、コントロールと変化球も着実にレベルアップしており、カットボール、フォークなども一級品だ。夏の群馬大会では2試合、5イニングを投げただけだったが、一人の出塁も許さずに8奪三振。決勝の前橋育英戦ではタイブレークとなった10回、11回も失点を許すことはなかった。地方大会の登板を見てもまだ調整途上と言え、甲子園に向けてさらに調子を上げてくることも期待できる。甲子園での投球内容次第では、複数球団による1位指名の可能性もありそうだ。

 石垣以外の投手となると右腕では早瀬朔(神村学園)、石山愛輝(中越)、左腕では江藤蓮(未来富山)、佐藤龍月(健大高崎)、吉川陽大(仙台育英)、奥村頼人(横浜)などが候補となる。

 中でもプロからの評価が高いと見られるのが早瀬と江藤の2人だ。早瀬は昨年夏の甲子園でも岡山学芸館戦で1失点完投勝利を挙げているが、当時はまだまだ身体が細く、ストレートは130キロ台がほとんどだった。そこから一冬超えて体が大きくなると、比例するようにスピードもアップし、春には最速150キロに到達。長いリーチを生かした豪快な腕の振りで躍動感も申し分なく、打者に与える威圧感はかなりのものがある。鹿児島大会では少し制球に苦しみ、安定感には課題が残るものの、大型右腕でスケールの大きさは魅力だ。
 江藤も富山では昨年から評判となっていた投手。4月に行われたU18侍ジャパン強化合宿にも召集されると、紅白戦でも見事な投球を見せてアピールした。たくましい体格とバランスの良いフォームから投げ込むストレートは常時140キロを超え、コーナーに投げ分ける制球力も備えている。また2種類のスライダー、緩急をつけるカーブ、チェンジアップなど変化球のレベルも高く、富山大会ではイニングを大きく上回る奪三振を記録してチームを初優勝に導いた。左投手では全国でも屈指の存在であり、初の大舞台で結果を残せばさらに評価は高くなりそうだ。
 もう1人、ここへ来て評価を上げてきている印象があるのが佐藤だ。昨年春のセンバツではエースとして優勝に貢献したものの、夏には肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けて長期離脱。そこから今年春に実戦復帰を果たすと、夏の群馬大会では145キロを超えるスピードを計時するなど成長ぶりを見せている。まだ故障からの復調途上で短いイニングでの登板になりそうだが、貴重な本格派左腕だけに注目している球団は多いだろう。

 野手は投手に比べると少し対象となる選手が少ない印象だが、花嶋大和(市立船橋・捕手)、清水詩太(京都国際・三塁手)、今岡拓夢(神村学園・遊撃手)などが候補となる。

 花嶋は入学直後から評判だった強打者で、昨年夏の千葉大会でも2本塁打をマーク。この夏の千葉大会も厳しいマークの中で5割近い打率を残しており、パワーと確実性を高いレベルで備えている。守備面はまだ課題が多いものの、打てるキャッチャーの素材として面白い存在だ。

 清水は昨年夏の優勝チームでは下位打線でそれほど目立つ存在ではなかったが、冬の間にパワーアップを果たすと、春からは木製バットでホームランを連発。夏の京都大会でも体調不良で出遅れたものの、2回戦ではスリーランを含む3安打4打点の大活躍を見せた。リストの強い打撃でスムーズに引っ張ることができ、サードの守備も捕球、送球ともに安定感がある。甲子園でも木製バットでホームランを放つようなことになれば評価はさらに高くなるだろう。

 3人の中でも最も評価が高そうなのが今岡だ。1年夏から甲子園に出場しており、昨年も中軸として活躍。今年春の九州大会でも初戦でいきなり先頭打者ホームランを放ち、夏の鹿児島大会でも一発こそ出なかったものの4割を大きく超える打率を残した。引っ張るだけでなくセンター中心に鋭い当たりを放つ打撃が持ち味で、ショートの守備も年々レベルアップしている。今年の高校生ショートでは屈指の存在と言えるだろう。

 他には夏の宮城大会では不振で下位打線に下がっていたが、高田庵冬(仙台育英・三塁手)も貴重な右のパワーヒッターとして復調に期待したい存在だ。

 冒頭でも触れたようにプロ志望の選手は決して多くはなさそうだが、それでも候補となる選手のレベルは決して低くない印象を受ける。それだけに甲子園の大舞台で、さらに評価を上げるような活躍を見せてくれることを期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

 

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