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高校野球

【甲子園】「1、2年生が二遊間に入る守備力では一歩及ばなかった」須江監督の言葉から見えた仙台育英の“限界”と“反撃の予感”<SLUGGER>

氏原英明

2025.08.17

激戦の末に敗れた須江監督。試合後は相手の沖縄尚学の選手たちに直接エールを送っていた。写真:THE DIGEST写真部

激戦の末に敗れた須江監督。試合後は相手の沖縄尚学の選手たちに直接エールを送っていた。写真:THE DIGEST写真部

 タイブレークによる惜敗にも、指揮官はうつむくことはなかった。

「ちょっとのミスや、ほんの数センチの差というのが許されないのが甲子園なんだなというのを思い出させてくれたので、チームにはとてもいい経験になりました」

 2年ぶりの夏の甲子園は沖縄尚学を前にタイブレークの末に3ー5で敗戦。しかし、仙台育英の須江航監督はリスタートとなった甲子園出場に大きな意義を感じているようだった。

 2022年に甲子園を初制覇。東北に初の真紅の大優勝旗をもたらした。翌年にも決勝進出。連覇はならなかったものの、就任してから数年での好成績に、須江監督自身はもちろんこと、仙台育英の評価が上がったことは間違いなかった。

 評判が上がれば、それだけ求められるハードルも上がる。全国の強豪校の多くが羨ましがるほどの逸材が仙台育英の門を叩くようになった。勝つことが当たり前になるし、選手も簡単に育てられると思われるようになる。だが、外から見れば充実した戦力も、中からすれば、それをどう形にするのかは決して簡単ではない。膨れ上がっていく周囲の期待との狭間で育成の難しさを感じていたに違いない。

 とはいえこれは、「本当の名門」になっていく上で、全国の強豪校が直面する必要な過程でもある。

「今日の試合では出せる力は出せましたけど、出せたことも出せなかったものも、ありのままの仙台育英だなと思いますね」
 須江監督がそう言ったのも、一時期の仙台育英からすれば今年の戦いが見劣りすることを自認しているからに他ならない。この日の試合でも、送りバントの失敗が幾度も見られたし、タイブレークでもミスによる失点があった。決して仙台育英らしくはなかった。

 だがそれは、練習不足の結果かと言われると決してそうではない。レギュラー争いが激化していく中で、メンバーを固定できないことが、どこかチームの成熟化の足を引っ張るということが時として起こってしまうのだ。

 今日の沖縄尚学戦では二遊間を1年生に任せながら試合途中で代打を送るなど、選手交代を何度も繰り返した。選手を交代しても力が落ちないのはさすがのチーム力ではあるが、延長タイブレークの際に綻びを見せたのは、まさに選手交代を繰り返したポジションだった。

 途中出場し、二塁と一塁を守った中岡有飛は言う。

「公式戦で試合途中からポジションが変わるのは初めですけど、もともとは去年の夏にファーストでスタメンもすることもあったし、練習でもやってきたので連携面については問題はありませんでした。相手の沖縄尚学さんは守備にも粘りがあって、自分たちも技術不足というか。それは感じました」

 選手たちは競争意識の中で、出番をもらえる嬉しさを心に置いて奮闘しているが、競争が激しいばかりに見えた相手との差だったかもしれない。

 大会中から話題になったスーパー1年生の存在も、ある意味では今のチーム状況を表す一端だった。須江監督は現状から目を背けずにこう話す。
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