プロ野球

ヤクルトの捕手争いに異変アリ。中村悠平、嶋基宏に続く開幕一軍の椅子を勝ち取るのは?

小中翔太

2020.02.12

高卒4年目の古賀は、注目のひとりだ。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 定数「3」を巡る争いが実戦段階へ突入した。

 ディフェンス面の改善が急務となっているヤクルトは、一軍キャンプに12球団最多タイとなる捕手5人を帯同させた。昨季までの正捕手・中村悠平、打撃が売りの西田明央、経験豊富で楽天から加入した嶋基宏、強肩の松本直樹、期待の若手・古賀優大の5人だ。

 中でもでも注目したいのが、"最後尾"からの開幕一軍を狙う最年少22歳の古賀だ。

 捕手の一軍登録人数は通常3人(球団や時期によっては2人の場合もある)。実績からすれば4番手か5番手の古賀がその切符を掴むためには、キャンプ、オープン戦で光る何かを首脳陣にアピールしなければならない。今季初の対外試合となった12日の韓国・サムスン戦ではスタメン出場。その一挙手一投足に一目を置いた。

 古賀は第1打席で125キロの変化球を叩いてセンター前に運ぶと、第2打席でも再びセンター前に安打を放つなど攻撃面で目立つ活躍を見せた。

 しかし、打撃好調に見えた古賀を試合後に捕まえてみると、彼の口から出てきたのは守備面についてばかりだった。

「痛打されるところもあったんですけど、しっかりピッチャーを引っ張れたかなと思います。キャッチャーなんで、まずは守れないとチームも流れに乗ってこないと思う」

 ファームではあるが、プロ1年目に.208だった打率が2018年は.224、昨季は.290と確実に向上。打撃への手応えを感じていてもおかしくないはずだが、それでも意識は守備に向く。古賀はこう続けた。

「嶋さんが入ってきて、嶋さん、中村さんのプレーを見て学べるものは吸収したい。自分の守備面でのプレーをまずは指導者にアピールすることを心がけてます」
 
 そうした古賀の姿勢は衣川バッテリーコーチに届いている。「ピッチャーをリードしながら、今取り組んでいるスローイングだったりキャッチング面はしっかりできていた」と初実戦での古賀について語っている。

 さらに、衣川コーチは高卒4年目の古賀がベンチ入りを射止めるために必要な要素としてこう付け加えた。

「(ベンチ枠)3人が同じ役割ではないと思う。扇の要のレギュラーなのか、打力が強いキャッチャーを1人置こうかなど異なってくる。その中で古賀の場合は守備をしっかり磨いて守備から試合に出る方だと思うので、このキャンプでは一軍のレベルになれるよう取り組んでいます」

 昨季はファーム75試合でマスクをかぶり無失策、守備率10割を記録した。経験がものを言うポジションなだけに割って入るのは容易ではないが、いつまでも二軍に甘んじているわけにもいかないだろう。

「去年より一軍で出れるように。開幕一軍に入れたらいいなと思ってます」

 将来の正捕手を目指してーー。古賀の戦いは始まったばかりだ。

取材・文●小中翔太

【著者プロフィール】
こなか・しょうた/1988年1月19日生まれ。京都府宮津市出身。大学野球連盟で学生委員を務め裏方の道へ。関西を中心に活動しウェブ媒体や雑誌に寄稿する。

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