2025年のワールドシリーズ（WS）は、２連覇を狙うロサンゼルス・ドジャースと、32年ぶりに大舞台へ返り咲いたトロント・ブルージェイズが激突。ドジャースは２連覇を、ブルージェイズは1993年以来の世界一奪還を目指す。その一方で、グラウンド外でもうひとつの戦いに注目が集まり始めている。

　昨年のドジャース対ニューヨーク・ヤンキースによるWSでは、第２戦前にLA出身のラッパー、アイス・キューブさんがライブを披露して本拠地ドジャー・スタジアムを沸かせた。続く第３戦ではNY出身のラッパーのファット・ジョーさんが登場し、ヤンキー・スタジアムに集結したファンを熱狂させた。

　そんな試合前パフォーマンスの行方に専門メディアは早くも注目を示している。現地20日に行なわれたア・リーグ優勝決定シリーズ第７戦で、ブルージェイズがシアトル・マリナーズを４対３で下し、ドジャースの対戦相手が決まると、専門メディア『Dodgers Nation』は公式Xを早速更新。「今こそ、WSの試合前にドジャー・スタジアムでケンドリック・ラマーのパフォーマンスが必要だ」と投稿。LAファンとして知られ、試合にも度々観戦している姿が目撃されているカリフォルニア出身のラッパー、ケンドリック・ラマー氏の名前を挙げた。
  　実はこの発言の背景には、深い因縁がある。というのも、今回ドジャースの対戦相手となるブルージェイズの地元トロントには、ラマー氏と激しい“ビーフ（喧嘩・対立）”を繰り広げたラッパーのドレイク氏がおり、同氏はブルージェイズのファンでもあるのだ。

　米ヒップホップ界を代表する２人の“ビーフ”は、24年にラッパーのJ.コール氏が自身とラマー氏、ドレイク氏の３人を「ビッグ３」と並べて称したことが発端だった。これに対しラマー氏が「“ビッグ３”なんてクソくらえ」と痛烈に反発。以降、J.コールは早々に身を引いたものの、ラマー氏とドレイク氏は互いに応酬するようにディス（侮辱する）トラックを矢継ぎ早に発表した。

　その内容は、ドレイク氏がAI音声でカリフォルニア出身の大物ラッパー、スヌープ・ドッグ氏の声を再現するなどの挑発を行なう一方で、両者ともに相手の子どもや家族、ゴシップにまで踏み込む過激なものに発展。ヒップホップシーンを騒然とさせた。SNS上ではファンや同業ラッパーも巻き込み、ドレイク氏の自宅周辺で銃撃事件が起こるなど、業界全体を揺るがす前代未聞の大抗争へと発展した。

　この対決は早くもネット上で話題を呼び、元MLB公式の記者で現在はニューヨーク・メッツのビートライターを務めるベン・ヨエル氏が注目。自身のＸで「ラマーとドレイクのワールドシリーズ」と投稿したほどだ。

　他にもカリフォルニアの地元メディア『The Sporting Tribune』のCEOアラシュ・マルカジ氏も自身のXで「ケンドリック・ラマーとドレイクの“世紀のビーフ”の最終章がワールドシリーズ（WS）で幕を開ける」とコメント。危険な香りを示唆した。

　ドジャースとブルージェイズによるWSの試合前パフォーマンスで、因縁を抱える地元ラッパー同士の“対峙”は実現するのか。今後の展開からも目が離せない。

構成●THE DIGEST編集部

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