ロサンゼルス・ドジャースがトロント・ブルージェイズとのワールドシリーズ第2戦を5対1で制し、成績を1勝1敗とした。ウィル・スミスとマックス・マンシーのソロ本塁打などで5点を奪い、投げては先発の山本由伸が9回105球、被安打4、8奪三振、1失点で見事な完投勝利。山本の好投は初戦を4対11で落としたチームに勢いをもたらし、ドジャー・スタジアムで行なわれる第3~5戦に大きな弾みをつけた。
米メディア『The Athletic』のファビアン・アルダヤ記者は、試合後の記事で山本の心理面に迫った記事を公開。ムードメーカーのチームメイト、キケ・ヘルナンデスとのエピソードを記した。
話は1年前のポストシーズンにさかのぼる。2024年10月5日に行なわれたサンディエゴ・パドレスとのナ・リーグ地区シリーズ初戦に先発した山本は、初回から本塁打などで計3失点。さらに3回にも2点を失ってしまい、3回5失点で降板した。チームは逆転勝利したものの、山本には苦いポストシーズンデビューとなった。
パドレスとの地区シリーズは2勝2敗で第5戦にもつれ込み、その大一番の先発マウンドに上がったのが山本だった。アルダヤ記者によると第5戦の登板前、K・ヘルナンデスが山本を朝食に誘ったという。
「言葉の壁があったが、キケは日本から来た若きエースに伝えたいことがあった。初のポストシーズン登板となったパドレスとの地区シリーズ初戦で3回5失点KO。山本は自身を失い、慎重になりすぎていた。"調子はどうだ?"と話を切り出したキケに、山本はアメリカの打者への攻め方に戸惑いがあると打ち明けた。打者の弱点ばかりを考え、自分の持ち味を完全に失っていたのだ。山本のゲームプラン会議は、豊富な球種をどう活かすのかよりも、いかに相手打者を抑えるのかに集中していた。キケはそんな山本を安心させたいと思っていたのだ」
K・ヘルナンデスは、その場でこう伝えたという。「調整ってのは、失敗した時にするものだ。君はまだ失敗していない。調整は失敗してからすればいいんだ。いまは自分の野球を貫けばいいんだよ」。アルダヤ記者は、この時の励ましが山本を変えたと断言している。
ダルビッシュ有との投げ合いとなった第5戦で山本は5回63球、被安打2、無失点と好投。ポストシーズン初勝利を挙げて、チームのナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)進出に貢献した。ニューヨーク・メッツとのNLCS第4戦では4回途中2失点でマウンドを譲ったものの、チームは10対2の勝利。ニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズ第2戦では7回途中1失点と快投を見せ、ポストシーズン2勝目を挙げて"世界一"の立役者のひとりとなった。朝食に誘ったK・ヘルナンデスの目的は果たされた。
「キケとの朝食以来、山本はポストシーズンで無敵状態だ。24年と25年の計8試合で44回1/3を投げて防御率は驚異の1.62。伝説は着実に積み上げられている。山本はポストシーズンの英雄だ。ブルージェイズ戦に完投して14年ぶりにポストシーズン2試合連続完投勝利。チームは息を吹き返した。もはや10月は山本の月だ。相手チームを強力な打撃で蹂躙してきたブルージェイズ相手に圧巻の投球を見せた」
こう記したアルダヤ記者は、「本当に高いレベルで投げている。いまの彼は、投手としてまったく未知の領域にいる」というドジャースのマーク・プライアー投手コーチのコメントを紹介。さらに、ムーキー・ベッツは「長く野球をやってきたけど、あんな投球は見たことがない」と驚いていた。山本は3回途中から9回の最後まで、ブルージェイズ打線を20人連続アウトに抑えて見せたのだ。
「俺の言ったとおりだろ。打者の得意球だろうが関係ない。自分の最高のボールを信じろ。お前のベストは、他の誰のボールよりもすごいんだから」。K・ヘルナンデスは試合中にこう思って守備についていたという。
さらに「彼のやっていることは普通じゃない。本来、人間はこれほど成長し続けられるものじゃないのに、実際にそれを実現している。ヤツにとって限界なんて存在しないのかもしれない。無限大かもしれないな」。K・ヘルナンデスは試合後、"お気に入り"の山本の底知れない実力をそう表現した。
「完璧だった。今の山本なら何でも可能だ」とアルダヤ記者が称えたように、4対11と大敗した初戦のダメージを癒すには、山本の第2戦での完投は十分すぎるほどだった。「山本はイニング間にノートに戦略メモを書き込み、冷静さを保っていた。そこにはキケのアドバイスが生きていた。――"相手に合わせるな。自分に合わせさせろ"」。
構成●THE DIGEST編集部
【動画】MLB公式が公開した山本由伸の好投集、121万視聴超え!
米メディア『The Athletic』のファビアン・アルダヤ記者は、試合後の記事で山本の心理面に迫った記事を公開。ムードメーカーのチームメイト、キケ・ヘルナンデスとのエピソードを記した。
話は1年前のポストシーズンにさかのぼる。2024年10月5日に行なわれたサンディエゴ・パドレスとのナ・リーグ地区シリーズ初戦に先発した山本は、初回から本塁打などで計3失点。さらに3回にも2点を失ってしまい、3回5失点で降板した。チームは逆転勝利したものの、山本には苦いポストシーズンデビューとなった。
パドレスとの地区シリーズは2勝2敗で第5戦にもつれ込み、その大一番の先発マウンドに上がったのが山本だった。アルダヤ記者によると第5戦の登板前、K・ヘルナンデスが山本を朝食に誘ったという。
「言葉の壁があったが、キケは日本から来た若きエースに伝えたいことがあった。初のポストシーズン登板となったパドレスとの地区シリーズ初戦で3回5失点KO。山本は自身を失い、慎重になりすぎていた。"調子はどうだ?"と話を切り出したキケに、山本はアメリカの打者への攻め方に戸惑いがあると打ち明けた。打者の弱点ばかりを考え、自分の持ち味を完全に失っていたのだ。山本のゲームプラン会議は、豊富な球種をどう活かすのかよりも、いかに相手打者を抑えるのかに集中していた。キケはそんな山本を安心させたいと思っていたのだ」
K・ヘルナンデスは、その場でこう伝えたという。「調整ってのは、失敗した時にするものだ。君はまだ失敗していない。調整は失敗してからすればいいんだ。いまは自分の野球を貫けばいいんだよ」。アルダヤ記者は、この時の励ましが山本を変えたと断言している。
ダルビッシュ有との投げ合いとなった第5戦で山本は5回63球、被安打2、無失点と好投。ポストシーズン初勝利を挙げて、チームのナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)進出に貢献した。ニューヨーク・メッツとのNLCS第4戦では4回途中2失点でマウンドを譲ったものの、チームは10対2の勝利。ニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズ第2戦では7回途中1失点と快投を見せ、ポストシーズン2勝目を挙げて"世界一"の立役者のひとりとなった。朝食に誘ったK・ヘルナンデスの目的は果たされた。
「キケとの朝食以来、山本はポストシーズンで無敵状態だ。24年と25年の計8試合で44回1/3を投げて防御率は驚異の1.62。伝説は着実に積み上げられている。山本はポストシーズンの英雄だ。ブルージェイズ戦に完投して14年ぶりにポストシーズン2試合連続完投勝利。チームは息を吹き返した。もはや10月は山本の月だ。相手チームを強力な打撃で蹂躙してきたブルージェイズ相手に圧巻の投球を見せた」
こう記したアルダヤ記者は、「本当に高いレベルで投げている。いまの彼は、投手としてまったく未知の領域にいる」というドジャースのマーク・プライアー投手コーチのコメントを紹介。さらに、ムーキー・ベッツは「長く野球をやってきたけど、あんな投球は見たことがない」と驚いていた。山本は3回途中から9回の最後まで、ブルージェイズ打線を20人連続アウトに抑えて見せたのだ。
「俺の言ったとおりだろ。打者の得意球だろうが関係ない。自分の最高のボールを信じろ。お前のベストは、他の誰のボールよりもすごいんだから」。K・ヘルナンデスは試合中にこう思って守備についていたという。
さらに「彼のやっていることは普通じゃない。本来、人間はこれほど成長し続けられるものじゃないのに、実際にそれを実現している。ヤツにとって限界なんて存在しないのかもしれない。無限大かもしれないな」。K・ヘルナンデスは試合後、"お気に入り"の山本の底知れない実力をそう表現した。
「完璧だった。今の山本なら何でも可能だ」とアルダヤ記者が称えたように、4対11と大敗した初戦のダメージを癒すには、山本の第2戦での完投は十分すぎるほどだった。「山本はイニング間にノートに戦略メモを書き込み、冷静さを保っていた。そこにはキケのアドバイスが生きていた。――"相手に合わせるな。自分に合わせさせろ"」。
構成●THE DIGEST編集部
【動画】MLB公式が公開した山本由伸の好投集、121万視聴超え!