秋風が漂う甲子園の夜空に深いため息が渦巻いた。10月30日、「SMBC日本シリーズ2025」第5戦。阪神は延長11回の激闘の末、ソフトバンクに2―3で敗戦。この瞬間、対戦成績は1勝4敗となり、阪神としては2年ぶり3度目の日本一を逃した。左翼上段席のホークス応援席から発生する大歓声と虎党のため息が混沌とする中、藤川球児監督は何とも言えない表情でグラウンドに視線を向けていた。
華やかな表彰式が終わった後、藤川監督は担当記者の待つ囲み取材に対応。ソフトバンクと戦った5試合を振り返り「底力ありましたね。非常に強かったです。タイガースとしてできることはやってきましたけども、非常に強かった」と潔く力負けを認めた。
指揮官の言葉には悔しさというよりも、何となく清々しさがにじみ出してているような印象があった。球団史上初の就任1年目でのリーグ優勝を果たし、頂点まであと一歩。ただ、その一歩の大きさ、重さを痛感したシリーズでもあった。
敵地みずほペイペイドーム福岡での第1戦を、セ・リーグ投手部門三冠の村上頌樹が堂々の7回1失点の力投で2-1のスコアで制したとき、流れは阪神にあるかのように思えた。甲子園での胴上げ。現実味を帯びた夢へと向かい最高の雰囲気がチームに漂っていた。
だが、第2戦でソフトバンク打線が猛反撃。1回に佐藤輝明の適時打で先制し阪神が勢いをキープしているかに見えたが、奇策の先発・ジョン・デュプランティエが大誤算だった。2回途中7失点の乱調をきっかけに9点差の大敗。柳田悠岐、周東佑京、近藤健介、山川穂高ら鷹打線を覚醒させてしまった。
そして甲子園にソフトバンクを迎え撃っての3試合はいずれも1点差での敗戦となった。勝敗を分ける小さな綻びの積み重ね。紙一重に見えてそうではない。第5戦がまさに象徴的な一戦だった。2点リードのまま8回から今季50試合連続無失点のままフィニッシュした鉄壁クローザー・石井大智を投入。虎党の多くが勝利を確信したはずだった。
が、一死一塁の場面、追い込んでからの外角150キロの直球を右翼ポール際に入るはずのない柳田の2ランで同点に。延長に突入した10回からは第1戦で先発した村上をマウンドに送る“背水の陣”を敷いたが11回、野村勇に右翼スタンドに届く豪快な決勝弾を許してしまった。いずれも、シーズン中に右翼から左翼方向に吹く“甲子園名物”の浜風が吹いていればホームランにはなっていない打球だっただろう。柳田の打球はファウルに、野村の打球は右飛になっていた可能性が高い。
だが、野球に「たられば」はない。DHのない甲子園では近藤が代打で控える層の厚さ。中村晃は故障のためベンチ外。主打者の牧原大成が下位打線を支えるという分厚い布陣は阪神にはないものだった。6番打者以降の両軍の打線を比較すればその差は明瞭だ。
藤川監督は「悔しさはない。それだけ相手が強かったです。悔いが残るようなことは全くしていません。1点差というのは時の運のように見えて、そうでもない。1点は少しではない小さな積み重ねの一つだったりもする」と言葉を選びながら話した。
華やかな表彰式が終わった後、藤川監督は担当記者の待つ囲み取材に対応。ソフトバンクと戦った5試合を振り返り「底力ありましたね。非常に強かったです。タイガースとしてできることはやってきましたけども、非常に強かった」と潔く力負けを認めた。
指揮官の言葉には悔しさというよりも、何となく清々しさがにじみ出してているような印象があった。球団史上初の就任1年目でのリーグ優勝を果たし、頂点まであと一歩。ただ、その一歩の大きさ、重さを痛感したシリーズでもあった。
敵地みずほペイペイドーム福岡での第1戦を、セ・リーグ投手部門三冠の村上頌樹が堂々の7回1失点の力投で2-1のスコアで制したとき、流れは阪神にあるかのように思えた。甲子園での胴上げ。現実味を帯びた夢へと向かい最高の雰囲気がチームに漂っていた。
だが、第2戦でソフトバンク打線が猛反撃。1回に佐藤輝明の適時打で先制し阪神が勢いをキープしているかに見えたが、奇策の先発・ジョン・デュプランティエが大誤算だった。2回途中7失点の乱調をきっかけに9点差の大敗。柳田悠岐、周東佑京、近藤健介、山川穂高ら鷹打線を覚醒させてしまった。
そして甲子園にソフトバンクを迎え撃っての3試合はいずれも1点差での敗戦となった。勝敗を分ける小さな綻びの積み重ね。紙一重に見えてそうではない。第5戦がまさに象徴的な一戦だった。2点リードのまま8回から今季50試合連続無失点のままフィニッシュした鉄壁クローザー・石井大智を投入。虎党の多くが勝利を確信したはずだった。
が、一死一塁の場面、追い込んでからの外角150キロの直球を右翼ポール際に入るはずのない柳田の2ランで同点に。延長に突入した10回からは第1戦で先発した村上をマウンドに送る“背水の陣”を敷いたが11回、野村勇に右翼スタンドに届く豪快な決勝弾を許してしまった。いずれも、シーズン中に右翼から左翼方向に吹く“甲子園名物”の浜風が吹いていればホームランにはなっていない打球だっただろう。柳田の打球はファウルに、野村の打球は右飛になっていた可能性が高い。
だが、野球に「たられば」はない。DHのない甲子園では近藤が代打で控える層の厚さ。中村晃は故障のためベンチ外。主打者の牧原大成が下位打線を支えるという分厚い布陣は阪神にはないものだった。6番打者以降の両軍の打線を比較すればその差は明瞭だ。
藤川監督は「悔しさはない。それだけ相手が強かったです。悔いが残るようなことは全くしていません。1点差というのは時の運のように見えて、そうでもない。1点は少しではない小さな積み重ねの一つだったりもする」と言葉を選びながら話した。




