プロ野球

【DeNA】リーグ優勝できるチームへ「ノリの野球と勢いの野球は全く違う」筒香嘉智が目論む“勝ち続けられる組織作り”

萩原孝弘

2025.11.24

自身の25年シーズンを振り返った筒香。勝ち続けられるチームについての考えも明かした。写真:萩原孝弘

☆存在感を示した元キャプテン

 故障者の多さに泣いた終盤戦の横浜DeNAベイスターズ打線において、ひとり気を吐いたのが筒香嘉智だ。契約更改では現状維持でサインしたと明かし「自分の感覚を取り戻すことができたので、後半は感覚通りの数字が出せたのかと思います」と納得の表情を浮かべた。

 確かにシーズン後半は、キャプテンの牧秀悟とヒットメーカーの宮﨑敏郎が怪我で離脱し、昨年の首位打者タイラー・オースティンも万全とは言えぬコンディション。本来クリーンアップを担うはずのレギュラー陣がゴソッと抜けた。そんな危機的状態のなか、夏場に状態を上げた筒香は8月に33打数11安打、そのうち8本がホームラン。長打率1.161と大砲ぶりを発揮し、打率.174まで落ち込んだ7月上旬とは別人の活躍を見せた。

 良化を遂げた原因は、「身体の感覚なのですが、どうしてもかかと方向に向いているような感覚がずっとありまして。それが戻れば打てるというのがずっとありました」と常日頃から大切にしている"感覚"にあったと回想。ファームでの調整時でも「横須賀で振り込んだとき、感覚が戻ったかといえば全く出ていませんでした」と試行錯誤していたという。

 一軍に復帰して3戦目、代打で3ラン本塁打を放った8月13日の東京ヤクルトスワローズ戦(明治神宮野球場)の試合前練習の際に「もう完璧に打てるという感覚が出て、東京ドームでも打てて、横浜スタジアムに帰っても、もうこの方向で間違ってない、このままイケるという感覚になりました」と真夏に自分を取り戻せたと頷いた。

 自身にしかわからない感覚は「パイレーツにいたときの2021年に近いですかね。日本にいたときよりもそのときの感覚のほうが似ています。でも全く一緒ではないです」と複雑なモノながら、やっと手に入れた手応え。その結果、最終的に打率は.228ながら、ホームラン20本はチームトップと自慢の長打力は健在だ。また宮﨑敏郎の代役としてサードを守った際も、堅実な守備と元キャプテンらしい心遣いでピッチャー陣を鼓舞するなど、チームをリーグ2位に引き上げる原動力となった。
 
☆目標は「優勝です」

 来季の目標は「優勝です」とキッパリ。チーム全体と個人の目標もそこだけにフォーカスすると言い切る。ただし「去年も今年も春先は全然ダメでしたので、来年からは1年トータルで。身体も健康な状態でできるように、しっかりと準備したいと思います」と決意し、「ある程度の軸というのは僕の中にあるので、そこを中心にできればなと思っています」と今年掴んだ感覚をベースに、来シーズンに臨むとした。

 24年に日本一となり、リーグ優勝が厳命されていた今シーズンだったが、残念ながら2位に甘んじた。しかも首位阪神は独走と、影すら踏めなかった現状がある。

 頂きに立つため、「ノリの野球と勢いの野球。ここは全く違うと思います。勢いのつくチームでないといけないなと思います。ノリというものは続かないと思うので。勢いが出るっていうのは、ほんとに必ずその理由があって勢いが出ると思いますので、勢いが出るために必要なものっていうのはたくさんあると思います」と、安定して勝ち続けるには足りないモノがあると説いた。

 また「プロ野球選手ですので、自分の成績が1番というのももちろん理解できます」と個々の立場にも踏み込みつつ「でもやはりプロ野球が成り立ってるのは、ファンの方がいて、横浜の街があってこそだと思いますので、自分の成績はもちろん大切にしつつ、そこを超えたところに優勝っていうのが出てくると思います」と力を込める。自身やチームは当然として、プラスアルファ街全体をも背負って戦う先に、頂点がある。

 愛する横浜を歓喜の渦に包むため「そういった選手が2月1日に1人でも多いと願ってます」とチームメイトに同調を求めながら、「僕自身も気を引き締めながら精進していかないといけないと思っています。強い意思と強い心、そしてその中でもしっかり地に足をつけて、2月1日を迎えればなと思います」と先を見据える。経験と思慮深さと感覚を武器に、来季こそあのフラッグを手に入れる。

取材・文●萩原孝弘

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