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高校野球

【甲子園】戦術ありきか、個性の力を信じるべきか──仙台育英が札幌日大を下した開幕戦から見える今大会の道標は<SLUGGER>

氏原英明

2026.08.06

開幕戦の勝利を喜ぶ仙台育英のメンバー 写真:THE DIGEST写真部

開幕戦の勝利を喜ぶ仙台育英のメンバー 写真:THE DIGEST写真部

 第108回全国高校野球選手権が開幕した。

 初日である5日、開会式直後に行われた唯一の試合は、仙台育英が札幌日大を3-1の接戦の末に下した。優勝候補の一つとの呼び声高い仙台育英だったが、「辛くも逃げ切った」という印象のゲームだった。

「被安打数以上に追い込まれている粘り強さみたいなものを感じました。緊張感のある試合をさせてもらったと思います」

 仙台育英・須江航監督の言葉は、この試合の難しさを物語っていた。

 開幕戦には大会の方向性の一端を示す道標としての要素もあるが、この試合はどこか不思議なゲームだった。
 
 仙台育英は8安打を放つも終始攻めている様子はなく、一方の札幌日大は10四死球を得ながらも好機を生かせなかった。どちらが優勢なのかわからない状態が、いつまでも続く試合であった。

 少し気になったのは仙台育英の攻め方だった。近年の仙台育英が甲子園で見せてきた野球は、洗練された緻密な野球だった。ポテンシャルの高い選手が多いのは事実だが、甲子園で勝つための戦術にも徹してきた。あらゆる打順の選手がどんな作戦にも対応できる。送りバント、エンドラン、スクイズ、ダブルスチール、セーフティスクイズ。そんな印象だった。須江監督がかつて中学軟式野球界の名将だったことも少なからず影響していただろう。
 
 しかし、この日はその印象が薄かった。初回は3番の丹羽裕聖が四球で出塁したものの、全てフライで3つのアウトを献上した。

 2回には先頭の高岡龍一が敵失で出塁した後、6番の有本豪琉は遊撃ゴロの併殺打。手堅い戦術の印象は完全に崩れた。

 一方で3回裏の先制点は二死から1番の小久保颯弥の長打(右翼線二塁打)から後続の短打が適時打に。これも珍しく映った。

 そして、4回裏には主砲・田山纏が豪快に振り抜いて右翼ソロ本塁打。新しい野球が仙台育英に生まれているかのようだった。

 しかし須江監督にそれを問うと、指揮官はこれをはっきり否定した。

「いや、まだ(このチームは)発展途上なので。下級生が多いということは、そんなに完成度なんてないわけですよ、基本的に。でも各々の長所に関しては振り切ってます。長所だけでは勝負にならないから、ケースケースで長所に寄せた攻撃をしている。グリーンライトでスチールみたいなのもあったし、エンドランもあったんですけど、ショートゴロゲッツーとかファウルとか何回かあって」

 作戦がうまくはまらなかっただけで、決してかつての仙台育英野球を転換したわけではないという。
 

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