「ピッチングコーチには夢のローテーションがある」(ロッテ・吉井理人)
現在、ロッテで一軍投手コーチを務める吉井の手腕には以前から定評がある。これまでコーチを歴任した日本ハム、ソフトバンクをいずれも日本一に導き、"優勝請負人"の異名を持つ。2018年オフにロッテからオファーを受けたのも、前年防御率リーグ5位に終わった投手陣の再建を託されてのことだ。
吉井コーチが得意とするのは、投手陣のマネジメントだ。「チームの勝利よりも選手の幸せ」をモットーとし、年間を通じて投手のコンディションを良好に保つことを最優先とする。日本ハムのコーチ時代には、リリーフ投手がブルペンで肩を作る回数に制限を設け、それを超えた場合は登板を回避させるなど、とにかく選手の状態を第一に考える姿勢を貫いてきた。
そんな吉井コーチの集大成ともいえるのが、日本ハムに復帰した16年にチームを日本一へ導いたマネジメントだ。前年は先発投手陣の駒不足に悩まされたため、クローザーの増井浩俊(現オリックス)を先発へ転向させ、二軍から高梨裕稔(現ヤクルト)を抜擢するなど大胆な改革を行った。2人はともに2ケタ勝利を挙げ、大谷翔平(現エンジェルス)、有原航平とともに10勝カルテットを形成してチームの優勝に貢献。高梨は新人王を受賞した。
この年のハイライトは、7月1日から3日にかけての対ソフトバンク3連戦だろう。この時点で首位だったホークスに対して高梨、有原、大谷の3人を先発に立て、見事3連勝。3人とも7回以上を無失点に抑える快投で、吉井コーチのコンディション管理が結実した形となった。前述の"夢のローテーション"の話が飛び出したのはこの年のことだ。
「ピッチングコーチには、こんな構成にしたいっていう夢のローテーションみたいなものがあるんですよね。例えば、大谷、有原、高梨の3人とはイメージは異なりますが、1990年代のアトランタ・ブレーブスのローテーションがまさにそう」
吉井コーチが例に挙げた90年代のブレーブスは、まさにメジャー史上最高級の先発ローテーションを構築したチームだ。通算355勝を挙げたグレッグ・マダックス、同305勝のトム・グラビン、そして先発とリリーフの両方で活躍し、通算213勝&154セーブを記録したジョン・スモルツ。のちに殿堂入りする3人の名投手を軸に、投手王国の名を欲しいままにした。彼らの貢献もあり、ブレーブスはストで中断された94年を除き、91~05年まで14季連続地区優勝を果たす黄金時代を築いた。現役時代、何度もブレーブスと対戦した吉井コーチにとっては、なおさら印象が強いのだろう。
現在のロッテには、種市篤暉や岩下大輝ら才能ある若手投手が複数いる。さらに昨年のドラフトでは"令和の怪物"佐々木朗希を引き当てた。吉井コーチの手腕によって、彼らが順調に主力へと成長すれば、それこそ90年代のブレーブスのような強力ローテーションが完成するかもしれない。もしそうなった時にはきっと、ロッテにも"夢の黄金時代"が到来することだろう。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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現在、ロッテで一軍投手コーチを務める吉井の手腕には以前から定評がある。これまでコーチを歴任した日本ハム、ソフトバンクをいずれも日本一に導き、"優勝請負人"の異名を持つ。2018年オフにロッテからオファーを受けたのも、前年防御率リーグ5位に終わった投手陣の再建を託されてのことだ。
吉井コーチが得意とするのは、投手陣のマネジメントだ。「チームの勝利よりも選手の幸せ」をモットーとし、年間を通じて投手のコンディションを良好に保つことを最優先とする。日本ハムのコーチ時代には、リリーフ投手がブルペンで肩を作る回数に制限を設け、それを超えた場合は登板を回避させるなど、とにかく選手の状態を第一に考える姿勢を貫いてきた。
そんな吉井コーチの集大成ともいえるのが、日本ハムに復帰した16年にチームを日本一へ導いたマネジメントだ。前年は先発投手陣の駒不足に悩まされたため、クローザーの増井浩俊(現オリックス)を先発へ転向させ、二軍から高梨裕稔(現ヤクルト)を抜擢するなど大胆な改革を行った。2人はともに2ケタ勝利を挙げ、大谷翔平(現エンジェルス)、有原航平とともに10勝カルテットを形成してチームの優勝に貢献。高梨は新人王を受賞した。
この年のハイライトは、7月1日から3日にかけての対ソフトバンク3連戦だろう。この時点で首位だったホークスに対して高梨、有原、大谷の3人を先発に立て、見事3連勝。3人とも7回以上を無失点に抑える快投で、吉井コーチのコンディション管理が結実した形となった。前述の"夢のローテーション"の話が飛び出したのはこの年のことだ。
「ピッチングコーチには、こんな構成にしたいっていう夢のローテーションみたいなものがあるんですよね。例えば、大谷、有原、高梨の3人とはイメージは異なりますが、1990年代のアトランタ・ブレーブスのローテーションがまさにそう」
吉井コーチが例に挙げた90年代のブレーブスは、まさにメジャー史上最高級の先発ローテーションを構築したチームだ。通算355勝を挙げたグレッグ・マダックス、同305勝のトム・グラビン、そして先発とリリーフの両方で活躍し、通算213勝&154セーブを記録したジョン・スモルツ。のちに殿堂入りする3人の名投手を軸に、投手王国の名を欲しいままにした。彼らの貢献もあり、ブレーブスはストで中断された94年を除き、91~05年まで14季連続地区優勝を果たす黄金時代を築いた。現役時代、何度もブレーブスと対戦した吉井コーチにとっては、なおさら印象が強いのだろう。
現在のロッテには、種市篤暉や岩下大輝ら才能ある若手投手が複数いる。さらに昨年のドラフトでは"令和の怪物"佐々木朗希を引き当てた。吉井コーチの手腕によって、彼らが順調に主力へと成長すれば、それこそ90年代のブレーブスのような強力ローテーションが完成するかもしれない。もしそうなった時にはきっと、ロッテにも"夢の黄金時代"が到来することだろう。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
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