2010年代以降、“球界の速球王”の称号は長い間アロルディス・チャップマンが欲しいままにしていた。10年にメジャーデビューを果たしたキューバ出身の左腕は、直後にいきなり105マイル(169キロ)を計測。以後、この数字は「史上最速のボール」として認定されてきた。
しかし18年、ついにチャップマンと肩を並べる男が登場した。その年、21歳でデビューしたばかりのジョーダン・ヒックス(セントルイス・カーディナルス)である。彼の剛速球は、左打者から見て外に沈んで逃げるように変化し、分類上はシンカー。そのシンカーを武器に、ヒックスは快挙を成し遂げた。
5月18日、本拠地ブッシュ・スタジアムでのフィラデルフィア・フィリーズ戦の9回、勝ち試合の最後を任された新人右腕は2アウトになってさらにギアを上げた。オデュベル・ヘレーラを相手にまず104.2マイル(167.7キロ)を投げると、続く2球目は外角を大きく外れるも105マイルに到達。球場内がどよめく中、3球目は104.3マイル(167.9キロ)、4球目に再び105マイルを達した。結局、ヘレーラは振り逃げで出塁したものの、ファンもチームメイトもヒックスの快投に喝采を送った。
試合後、ヒックスは「昨日103マイル出たから、今日はもうちょっと速く投げてやろうと思った」と涼しい顔で語ったが、実は裏話がある。ヒックスは、打席に入るまでの時間が長いヘレーラに以前から腹を立てていた。その怒りがボールに乗り移った結果が、夢の105マイル到達だったのである。しかも、この日ヘレーラに投じた5球のうち実に4球がその年のMLB全体の最速球ベスト10入りを果たしたのだから、よほどの怒りだったようだ。
この年は73試合に登板したヒックスは、昨年はクローザーを任されて順調にセーブを重ねていたが、6月に右ヒジを故障してトミー・ジョン手術を受けた。目標に掲げている106マイル(170.6キロ)達成は来シーズン以降に持ち越しになりそうだ。
構成●SLUGGER編集部
しかし18年、ついにチャップマンと肩を並べる男が登場した。その年、21歳でデビューしたばかりのジョーダン・ヒックス(セントルイス・カーディナルス)である。彼の剛速球は、左打者から見て外に沈んで逃げるように変化し、分類上はシンカー。そのシンカーを武器に、ヒックスは快挙を成し遂げた。
5月18日、本拠地ブッシュ・スタジアムでのフィラデルフィア・フィリーズ戦の9回、勝ち試合の最後を任された新人右腕は2アウトになってさらにギアを上げた。オデュベル・ヘレーラを相手にまず104.2マイル(167.7キロ)を投げると、続く2球目は外角を大きく外れるも105マイルに到達。球場内がどよめく中、3球目は104.3マイル(167.9キロ)、4球目に再び105マイルを達した。結局、ヘレーラは振り逃げで出塁したものの、ファンもチームメイトもヒックスの快投に喝采を送った。
試合後、ヒックスは「昨日103マイル出たから、今日はもうちょっと速く投げてやろうと思った」と涼しい顔で語ったが、実は裏話がある。ヒックスは、打席に入るまでの時間が長いヘレーラに以前から腹を立てていた。その怒りがボールに乗り移った結果が、夢の105マイル到達だったのである。しかも、この日ヘレーラに投じた5球のうち実に4球がその年のMLB全体の最速球ベスト10入りを果たしたのだから、よほどの怒りだったようだ。
この年は73試合に登板したヒックスは、昨年はクローザーを任されて順調にセーブを重ねていたが、6月に右ヒジを故障してトミー・ジョン手術を受けた。目標に掲げている106マイル(170.6キロ)達成は来シーズン以降に持ち越しになりそうだ。
構成●SLUGGER編集部