個人記録をほとんど気にしていなかったように見えた松井秀喜が、唯一「誇るべき記録」と口にしていたのが連続試合出場だった。巨人に入団した1993年からスタートし、日本での最後の年となった2002年まで1250試合。03年にニューヨーク・ヤンキースへ移ってからも、大抵の主力選手が休養日を挟む中、松井は首脳陣に休養を打診されても断り、デビュー以来518試合ずっと出続けた。
だが、その記録は06年5月11日のボストン・レッドソックス戦で発生したアクシデントによって途切れる。1回表無死一塁、マーク・ロレッタの放ったレフト前に落ちそうな打球に、左翼手の松井はスライディングキャッチを試みる。だが左手にはめたグラブが芝に引っかかってしまい、手首があらぬ方向へ曲がったのが傍目にも見て取れた。
表情を歪めながら左手首を押さえる松井。センターのジョニー・デーモンが「右手首の2倍に膨れ上がっていた」と言ったくらいで、救急車で病院に運ばれた。診断の結果はやはり骨折で、すぐ手術したが復帰まで最低3ヵ月、最悪シーズン終了もあり得ると言われたほどの重傷だった。
この怪我により、日米合算の連続出場記録は1768試合でストップした。衣笠祥雄の日本記録である2215試合まであと447試合。フル出場を続けていれば、2年後の08年には抜けるところまで迫っていて、衣笠も「僕の記録を超えるのを楽しみにしていたのに」と残念がった。
松井にとっては不運な怪我だった。しかし、この種の記録は「止めどころ」が難しいもの。不振などに陥って批判されながら継続する事態にならずに済んだのは、むしろ幸運だったかもしれない。
4ヵ月後の9月12日にメジャー復帰を果たした松井は、いきなり4打数4安打。「これまで体験したことがないほどのアクシデント。これを乗り越えられるかどうか。乗り越えてみせると自分自身に誓っている」。その言葉通り。松井はその後もヤンキースの主力として活躍を続けた。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
【PHOTO】NY本拠地デビュー満塁弾、09年ワールドシリーズMVP…数々の伝説を作った”ゴジラ”松井秀喜!
だが、その記録は06年5月11日のボストン・レッドソックス戦で発生したアクシデントによって途切れる。1回表無死一塁、マーク・ロレッタの放ったレフト前に落ちそうな打球に、左翼手の松井はスライディングキャッチを試みる。だが左手にはめたグラブが芝に引っかかってしまい、手首があらぬ方向へ曲がったのが傍目にも見て取れた。
表情を歪めながら左手首を押さえる松井。センターのジョニー・デーモンが「右手首の2倍に膨れ上がっていた」と言ったくらいで、救急車で病院に運ばれた。診断の結果はやはり骨折で、すぐ手術したが復帰まで最低3ヵ月、最悪シーズン終了もあり得ると言われたほどの重傷だった。
この怪我により、日米合算の連続出場記録は1768試合でストップした。衣笠祥雄の日本記録である2215試合まであと447試合。フル出場を続けていれば、2年後の08年には抜けるところまで迫っていて、衣笠も「僕の記録を超えるのを楽しみにしていたのに」と残念がった。
松井にとっては不運な怪我だった。しかし、この種の記録は「止めどころ」が難しいもの。不振などに陥って批判されながら継続する事態にならずに済んだのは、むしろ幸運だったかもしれない。
4ヵ月後の9月12日にメジャー復帰を果たした松井は、いきなり4打数4安打。「これまで体験したことがないほどのアクシデント。これを乗り越えられるかどうか。乗り越えてみせると自分自身に誓っている」。その言葉通り。松井はその後もヤンキースの主力として活躍を続けた。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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