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MLB

サイン盗みスキャンダルの余波?アストロズのスター選手が代理人を解任した理由とは

宇根夏樹

2020.05.27

打ってよし守ってよしのブレグマン。昨年はMVP投票2位、シルバースラッガー賞も受賞した。(C)Getty Images

打ってよし守ってよしのブレグマン。昨年はMVP投票2位、シルバースラッガー賞も受賞した。(C)Getty Images

 今月下旬、アレックス・ブレグマン(ヒューストン・アストロズ)が自身のエージェント(代理人)を変更した。本人からの発表はないものの『ヒューストン・クロニクル』紙をはじめ、いくつものメディアが一斉に報じている。

 スポーツ選手が代理人を変えるのはそう珍しいことではない。ただ、そのほとんどは、より有利な新契約を手にするためだ。時期としては、FAが視野に入ってきた段階となる。例えば、かつてブレグマンとチームメイトだったマーウィン・ゴンザレス(現ミネソタ・ツインズ)は、FAまであと1年となった2017年のオフに、オクタゴンからボラス・コーポレーションに乗り換えた。けれども、ブレグマンは昨年3月にアストロズと5年1億ドルの延長契約を交わしている。今回の解任は他に理由がある。

 これまで、ブレグマンの代理人を務めてきたのはブロディ・スコフィールドだ。今年4月、スコフィールドが運営するタイダル・スポーツは、NBAやNFLの選手を主な顧客とするクラッチ・スポーツの傘下に入った。クラッチ・スポーツを運営するリッチ・ポールは、NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)の代理人を務めている。
 
 先日、そのレブロンが出資するスポーツメディア会社がアストロズのサイン盗み騒動を題材にしたドキュメンタリーシリーズを制作することが明らかになった。「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話ながら、ブレグマンによる代理人解任が報じられたのは、番組の制作発表から数日後のことだった。

 言うまでもなく、ブレグマンはアストロズの中心選手だ。昨年は41本塁打を放ち、ア・リーグMVP投票で2位に入った。今春のキャンプでアストロズがサイン盗みについての謝罪会見を開いた時、オーナーとともにチームを代表して出席したのがホゼ・アルトゥーベとブレグマンだった。以前からSNSで奔放な発言が目立っていたこともあり、あるブックメーカーは「20年に最も多くの死球を受けるアストロズの選手」の予想でブレグマンのオッズを一番低くしている。一方、レブロンはアストロズの謝罪会見の直後に「俺はベースボールをプレーしてないけど、スポーツ界にいる。誰かに優勝を騙し取られたことに気づいたらクソむかつく!」とツイートした。

 報道によると、ブレグマンはスコフィールドに裏切られたとかなり怒っているらしいが、。『NBCスポーツ』は映画『アベンジャーズ』の台詞になぞらえて「ビジネスの観点では、ブレグマンは蟻でレブロンは(それを踏み潰す)ブーツ」とバッサリ斬り捨てている。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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