プロ野球

「世代」で見る広島の選手層ーー投手陣を引っ張る同学年の大瀬良と今村。野手陣は同い年の天才打者2人が君臨

氏原英明

2020.07.14

鈴木(左)と西川(右)、2人の天才がカープ打線を牽引する。写真:金子拓弥(THE DIGEST編集部)、産経新聞社

 チーム作りの基本は競争だ。選手間の競争意識を煽る要素の一つに"年齢"がある。あえて同年齢の選手を揃えて切磋琢磨させることが、チーム強化につながる。

 今回は広島を見ていこう。

 リーグ三連覇の頃は、田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の"タナ・キク・マル"に加えて安部友裕のいる89・90年世代がチームの中心だったが、一昨年オフに丸がFA移籍したことでチームは少しずつ形を変えつつある。

 投手陣は、エースの大瀬良大地を中心とした91・92年生まれ世代が君臨する。2013年のドラフト1位で入団した大瀬良は、福岡にある九州共立大からの入団だが、出身は長崎県。同郷で高卒入団の今村猛と良い関係を保っている。その今村はここ数年こそ厳しいシーズンを過ごしているが、通算111ホールドを上げるなど実力は確か。理想は大瀬良と今村が同時に活躍することだろう。また、大瀬良とドラフト同期の九里亜蓮も同い年で、先発・中継ぎを問わずフル回転して欠かせない存在となっている
 
 投手陣で91・92世代が君臨する一方、野手陣では94・95年世代の2人がチームを引っ張る。鈴木誠也と西川龍馬だ。

 12年のドラフト2位で入団した鈴木は、1位だった同じ高卒外野手の高橋大樹を追い抜いて今やチームの顔となった。昨季は打率、出塁率、O P Sの"三冠"を達成。侍ジャパンでも4番を務め、プレミア12ではMVPを獲得した。近い将来のメジャー挑戦も噂されており、同世代の逸材・大谷翔平に次ぐ存在として活躍が期待される。

 その鈴木が「天才」と打撃センスを称賛する西川は、敦賀気比高時代に甲子園に出場。その時は目立つ活躍ができなかったものの、社会人の王子を経て15年ドラフト5位で入団し、今季は開幕から3番センターを務めている。昨年6月にはセ・リーグ歴代6位の27試合連続安打を記録するなど、シュアなバッティングが大きな魅力だ。

 ここで列挙したようにタレントはまずまず揃っているが、他球団に比べると、同世代の切磋琢磨はやや少ない。とはいえ、新陳代謝がうまく進んでいけば、坂倉将吾や小園海斗といった若手有望株がチーム力を底上げしてくれるだろう。彼らがレギュラーを獲得したときに、チームは新たな局面を迎えているはずだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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