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プロ野球

【12球団“縁の下の力持ち”:阪神】“ゴリラポーズ”が炸裂する時、陽川尚将とタイガースの悩みが一気に解決!

市川いずみ

2020.06.10

一軍の壁に跳ね返されてきた陽川だが、今年は何やら違う雰囲気が。写真●山崎賢人(THE DIGEST写真部)

一軍の壁に跳ね返されてきた陽川だが、今年は何やら違う雰囲気が。写真●山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 チームを支えるのは、何もスター選手だけではない。絶対的なレギュラーでなくとも、率先してベンチを盛り上げたり、どんな役割もこなす選手もまた、必要不可欠な存在だ。19日に開幕するプロ野球。異例のシーズンだからこそ、より輝きを増しそうな「縁の下の力持ち」を紹介しよう。

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 マスクの上にマスクをつける球審。選手の姿はカメラマン席や観客席にも。違和感のある光景が広がるグラウンドで開幕へ向けての練習試合が続いている。とはいえ、やはり毎日野球を観られる状況が戻ってきたことは野球ファンとして嬉しい限りである。自宅でユニフォームを着て観戦したり、タオルやメガホンを持って応援しているファンもいるだろう。

 昨シーズンのタイガースでは、“矢野ガッツ”がファンの中で浸透。今年は親指と小指を立てるいわゆる“矢野アロハ”や、最近では新助っ人ボーアが『ドラゴンボール』のかめはめ波のようなポーズ(本人いわく“ファイアボール”・ポーズ)をするなど、直接球場にいなくとも、画面を通した観戦で楽しめるポーズが増えている。

 そんな中、私が今季たくさん見たいと思っているのが、“ゴリラポーズ”だ。陽川尚将がタイムリーや本塁打を放つと、ベンチにいる全員が両手拳で胸を叩き、ウホウホと言わんばかりに陽川の活躍を称える。これは何も見ていて楽しいだけではない。“ゴリラポーズ”が出れば出るほど、阪神が得点を挙げたことになるわけで、長年悩まされているチームの課題・打線の低迷が解決したことにもつながるわけだ。

 春季キャンプを終えてすぐ、陽川は「危機感しかない」と話していた。今季7年目を迎える28歳。右の大砲として期待され、ウエスタン・リーグでは2016年、17年の2年連続で本塁打王と打点王を獲得。18年には一軍75試合で6本塁打を放つなど飛躍のきっかけをつかんだかに見えたが、昨季は打率.109と絶不調で、出場試合も28試合にとどまった。
 
「何かが足りないんですよね」

 二軍で活躍して一軍に呼ばれるも、結果が残せずまた降格。この一言を、ここ数年何度も陽川から聞いた。一塁や三塁、外野が主なポジションとなる陽川にとって、ボーアやサンズの加入は危機感を感じざるを得ない状況なのは間違いない。自主トレ期間にはとにかくバットを振り込み、タイミングの取り方を身体に染み込ませた。

「今までのフォームは無駄が多かった」と言い、ミニハードルを使った敏捷性を高めるトレーニングも取り入れるなどキレも磨いてきた。3月15日まで行われたオープン戦では21打席とはいえ、打率.400、2本塁打、OPS1.279。6月2日から再開した練習試合では3日の二軍戦で走者一掃の適時二塁打を放つと、途中出場した6日の一軍戦では2打数2安打1打点の活躍をみせている。

 開幕一軍へ向けて好調なアピールを続けるが、「1打席1打席が勝負の中、いいヒットが打てた」という言葉からは、やはり今季にかける強い想いが伝わってくる。シーズンでも活躍して「ゴリラグッズ」が発売され、後半戦にはファンがそれを手に甲子園で応援することを願っている。

 もう“鳴尾浜のゴジラ”は卒業だ。

取材・文●市川いずみ

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