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またも捕手をドラフト1巡目指名! ジャイアンツが画策する驚きの“正捕手併用プラン“とは

宇根夏樹

2020.06.19

ポージー(左)の後継者には球団トップの有望株バート(右)がいる。にもかかわらず、今年のドラフトでまたも捕手を指名したジャイアンツの思惑とは? 写真:Getty Images

 今年のドラフトで、サンフランシスコ・ジャイアンツは1巡目(全体13位)に捕手を指名した。ノースカロライナ州大のパトリック・ベイリーだ。2年前にも、ジャイアンツは1巡目(全体2位)に捕手を指名している。こちらは、ジョージア工科大のジョーイ・バート。どちらの指名順位も、その年のドラフトでジャイアンツが持っていた最高位で、真っ先に捕手を指名したということになる。また、彼らはその年のドラフト全体において最初に指名された捕手でもある。

 バートはここまで順調に歩んできている。プロ2年目の昨シーズンは8月に2Aへ昇格し、メジャー昇格が間近に迫ってきた。にもかかわらず、ジャイアンツは彼と2歳しか違わないベイリーを指名した。そこにはどんな思惑があるのだろうか。

 2010年代のジャイアンツにおいて、最大のスターとして君臨していたのがバスター・ポージーである。10年の夏にポージーが正捕手となって以来、ジャイアンツは3度のワールドシリーズ優勝(10、12、14年)を飾った。ポージーも3度の世界一にそれぞれ貢献し、10年には新人王、12年にはMVPも獲得している。
 
 そして現在も、ポージーはジャイアンツの正捕手だ。ただ、今年33歳となり、ディフェンスはともかくオフェンスの低迷が目につく。チーム再建を目指すジャイアンツにとって、次代の正捕手の育成は急務となっている。

 バートは今年、MLB公式サイトのプロスペクトランキングで全体14位にランクインした。彼がポージーに代わる正捕手となればいいが、これはあくまでも青写真に過ぎない。ジャイアンツとしては、ポージーの後継者候補を2人用意することで不測の事態に備えたいのだろう。

 もちろん、バートとベイリーが揃って台頭する可能性もあるが、正捕手のポジションは一つしかない。けれども、そうなってもジャイアンツは困らない。成長中の若い捕手であれば、トレードの需要はある。それに、早ければ今季からナ・リーグでもDHが導入される。ジャイアンツはそのことも考慮に入れているはずだ。捕手は他のポジションより守備の負担が大きいだけに、彼らを捕手とDH、あるいは一塁などで併用することもできる。

 さらに都合がいいことに、バートとベイリーは同じ捕手であってもタイプは大きく異なっている。バートは打撃を得意としており、一方のベイリーは守備面での評価が高い。ジャイアンツが目論む2人の若手捕手併用プランは、それなりに現実的なものなのだ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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