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プロ野球

対左打者がパ・リーグの鍵?4人の左腕リリーバーを巧みに操る“栗山采配”への期待

氏原英明

2020.06.22

栗山監督の見事な継投が当たり、日本ハムは今季初勝利。左腕リリーバーの層の厚さは、パ・リーグにおいては強みになり得る。写真:産経新聞社

栗山監督の見事な継投が当たり、日本ハムは今季初勝利。左腕リリーバーの層の厚さは、パ・リーグにおいては強みになり得る。写真:産経新聞社

 常識的に考えて、こんな継投、簡単にできるものではない。

 21日の西武対日本ハム3回戦、5回裏のことだ。この回から登板した日本ハムの二番手・井口和朋は、西武の3番・森友哉、4番・山川穂高と順調に打ち取ったが、5番・外崎修汰に四球を与え、6番・中村剛也にも安打を打たれて二死一、二塁のピンチを招く。次は左打者の栗山巧というところで、栗山英樹監督は井口を諦め、サウスポーの堀瑞輝を投入したのである。

 0−2でリードしていた5イニング目にして、3人目の投手を投入。前日に続いて先発投手を4回で交代させる継投にももちろん驚いたが、対左打者を意識してのサウスポーの投入は、5回にしては思い切ったものである。強力な西武打線に対して打てる手はすべて打つ、そんな采配に見えた。
 
 堀は栗山から空振り三振を奪う見事なピッチングで、ピンチを無失点で凌いだ。栗山采配が完璧に当たった。

 こんな継投が可能なのは、日本ハムは堀の他に、宮西尚生、公文克彦、吉川光夫と4人もサウスポーをブルペン入りさせていることが大きい。この体制は対西武のみならず、パ・リーグという環境においては極めて理にかなっている。なぜなら、パには左の好打者が多いからだ。昨季の首位打者である森をはじめ、柳田悠岐(ソフトバンク)、吉田正尚(オリックス)、角中勝也(ロッテ)、銀次(楽天)など好打者が目白押しだ。

 打者とは対照的に、パ・リーグの左腕投手はセ・リーグほど充実しているわけではない。昨今の侍ジャパンに選ばれるのはセのサウスポーが多い。そんな状況にあって、日本ハムのブルペンはリーグ全体をしっかり見通した体制を整えている。
 
 5回に栗山1人を抑えた堀は、そのまま6回も続投。三者凡退に切って取り、7回からは同じくサウスポーの公文にスイッチした。公文も2番・源田壮亮に失策での出塁を許したものの、3番の森、4番・山川をしっかり抑えて無失点。この後の8回に打線が一挙6得点と大爆発し、最終的には12-2で勝利した。最後のマウンドにいたのは、やはり左腕の吉川だった。勝ちパターンのセットアッパー宮西は温存したままである。

 日本ハムとは対照的に、西武の左腕投手たちは苦しんでいた。7回に登板したルーキー左腕の浜屋将太は、9番の清水優心に被弾。8回にマウンドに上がった武隈祥太に至っては6失点の大炎上だった。

 日本ハムの栗山監督は昨季、ショートスターターや極端な守備シフトなどの新機軸を取り入れたが、結果は5位。順位が順位だけに批判も多かったが、今回の継投はその汚名を返上する見事な采配だったといえよう。

 もっとも、開幕直後はまだ投手陣がフレッシュな状態。この3連戦で全てを評価することは時期尚早だ。今後、柳田のいるソフトバンクや、吉田やT-岡田のいるオリックス、茂木栄五郎、鈴木大地、銀次のいる楽天などに通用するのか。日本ハムのブルペン戦術が真価を問われるのはこれからだ。

取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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