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MLB

ロッキーズに拾われた35歳の元二冠王。コロナ禍による特別ルールが救いになる!?

宇根夏樹

2020.07.06

ケンプは昨季、レッズで20試合に出場したのみ。ここ数年は毎年のように移籍を繰り返す〝流浪の身”だ。(C)Getty Images

ケンプは昨季、レッズで20試合に出場したのみ。ここ数年は毎年のように移籍を繰り返す〝流浪の身”だ。(C)Getty Images

 先月末、35歳のマット・ケンプがマイナー契約でロッキーズに入団した。ケンプは2011年に本塁打王&打点王の二冠を獲得するも、その後は故障もあって停滞。18年にはオールスターに出場するなど復活する気配を見せていたが、昨年はレッズで20試合に出場したのみだった。それでも昨年12月にマーリンズとマイナー契約を交わし、招待選手としてスプリング・トレーニングに参加していたが、今月再開したサマーキャンプ(スプリングトレーニング2.0)のプレーヤー・プール(上限60人)には入れず、退団してFAとなっていた。

 一方、ロッキーズでは、ケンプと契約する前日にイアン・デズモンドがシーズン全休を発表した。これは、新型コロナウイルス感染のリスクを考慮したものだ。また、6月下旬に新型コロナウイルスで陽性反応を示したロッキーズの3選手の中には、昨シーズンにデズモンドと右中間コンビを組んだチャーリー・ブラックモンが含まれていた。ブラックモンが開幕に間に合ったとしても、デズモンドを欠く外野陣は左打者ばかりになる。ケンプはデズモンドと同じ右打者だ。加えて、今シーズンはナ・リーグでもDHが採用される。その分、ラインナップに必要な打者は1人増える。
 
 不謹慎な表現かもしれないが、ケンプは新型コロナウイルスによってチャンスを得たという見方もできる。コロナ禍がなければ、ケンプがマーリンズの開幕ロースターに入る可能性は低かった。オープン戦の11試合は打率.143(28打数4安打)。しかも、長打は1本もなかった。

 とはいえ、ロッキーズでもマイナー契約であることからも分かるとおり、ケンプの開幕ロースター入りは約束されているわけではない。これまでキャリアのほとんどをナ・リーグ西地区で過ごし、ロッキーズの本拠地で、極端な打者有利で知られるクアーズ・フィールドでは、通算86試合で打率.327、21本塁打、OPS1.005を記録しているとはいえ、もう35歳。全盛期はとうに過ぎている。

 今シーズンの開幕ロースターは30人だ(遠征には、予備として捕手1名を含む3選手を帯同できる)。サマーキャンプのプレーヤー・プールにいる選手のうち、半数はそこに入れない。さらに、30人ロースターはシーズンを通して継続されるのではなく、15日目には28人、29日目からは26人となる。

 ロッキーズとしても、ケンプの加入でデズモンド不在の穴が完全に埋まったとは考えていないはずだ。2月下旬に噂が出ていたように、やはり右打者で強肩の外野手でもあるヤシエル・プイーグと契約するかもしれない。そうなるとケンプが押し出されることになりかねず、まだまだ安心はできないだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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