プロ野球

オリックス太田椋が値千金の同点弾!打線に火をつけた19歳の大仕事

藤原彬

2020.07.17

有望株として期待されている太田が待望の初本塁打。これは01年以降に生まれた選手では初のホームランでもあった。写真:滝川敏之

 驚きの表情をはにかみに変えながら、プロ2年目の19歳が初々しくダイヤモンドを一周した。

 7月16日、1点を先制されたオリックスは、3回に今季初の一軍昇格を果たした太田椋がバッターボックスへ。カウント3-1から「真っすぐ一本の気持ち」で狙っていた速球に反応すると、迷いなくバットを振り抜いた。弾き返した打球はファンの合唱と鳴り物の応援が消えた球場に快音を響かせながら、センターのフェンスを越えていく。

 前日まで二軍でプレーしていた選手らしく、日に焼けた浅黒い肌。スタンドインするとは思わずに、全力で一塁を駆け抜けた姿はフレッシュそのもの。チームの打撃投手を務める父・暁氏から「思い切りやれ」とアドバイスされたとおりのファーストスウィングから、試合を振り出しに戻す、価値ある同点弾が生まれた。

 18年ドラフト1位で入団した太田は昨春、オープン戦で一軍へ合流する直前の試合で右腕を骨折した。約3ヵ月のリハビリを経て、高卒ながら二軍の64試合で6本塁打を放ち、OPS.743と潜在能力の高さを披露。ただ、9月には一軍デビューを飾りながら、6試合でヒットのランプは灯せずに「悔しい思い」を募らせていた。

 迎えた今季は「いつでも一軍に行ける準備」を絶やさず、昇格後の初打席で大仕事をやってのけた。西村徳文監督も「ノッてくれた」と語ったように、打線に火がつき、4番・ジョーンズの2ランなども飛び出して一気に4得点。昨季まで通算12勝1敗と、チームの天敵であるバンデンハーク(ソフトバンク)を2回途中でマウンドから引きずり下ろした。
 
 7回一死からも太田は外角のボールをバットの先で拾い、遊撃手の頭を超える技ありのヒット。オリックスは4対3で勝利し、ソフトバンクとの同一カード連敗を2で止めた。

 太田を9番・三塁でスタメンに抜擢した西村監督は「こういう形で結果を残したら、使うしかない」と次の試合のスタメン起用も示唆している。

 広い京セラドームを本拠地にしているチームにとって、中軸を務められる打者の育成は積年の課題だ。特に右打者は、近鉄と合併した2005年以降で20本塁打をクリアした選手が皆無で待望久しい。

 球団最高の有望株は、まだ2本の安打を放ったばかり。それでも、スケールの規模と前途洋々を示すかのように大きく描かれたアーチは、観る者の期待を膨らませるに十分な一撃だっただろう。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『スラッガー』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。

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