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【担当記者が見た大谷翔平】右回内屈筋群損傷で今季中のマウンド復帰に暗雲…再び立ちはだかった高い壁

斎藤庸裕

2020.08.04

トミー・ジョン手術から復帰わずか2登板で再び右腕を痛めた大谷。チームにとっても大打撃だ。(C)Getty Images

 大谷翔平(エンジェルス)はベンチで悔しさをあらわにするにように下を向き、肩を落とした。ミッキー・キャロウェイ投手コーチになだめられた後、険しい表情でダグアウト裏に引き揚げた。右ヒジのトミー・ジョン手術から復帰後2戦目となった8月2日(現地時間)のアストロズ戦は2回途中5四球2失点で降板。打者10人に対して無安打ながら、課題だった制球にまたも苦しんだ。

 メジャー復帰登板となった7月26日のアスレティックス戦から改善は見られた。ジョー・マッドン監督が「速球の球速、スライダーも良かった。全体的に非常に良くなった」と評価したように、最速は前回の94.7マイル (約152キロ)から、97.1 マイル (約156キロ)に上昇。2回1死満塁の場面は、8番ジャック・メイフィールドには外角低めのスライダーでカウントを稼ぎ、最後は低めいっぱいの96.3 マイル (約155キロ)の4シームで見逃し三振を奪った。
 1死を取れずに降板した前回は、打者と対戦する段階まで行けなかった。「ただ投げている感じが強かった」。無観客の試合でアドレナリンが出にくいことも、要因の一つだったのだろう。この感覚をどう改善していくのか、2度目の登板前日に「そこだけは実戦の中でやるしかないというか、初めての感覚ですしね」と話した。打開策は試合の中で見つけていく。「何となく公式戦を戦っている雰囲気はないので、その中で何とかいい結果を出せるように頑張るしかない」とメンタル面での難しさを明かしていた。

 初回先頭のジョージ・スプリンガーには落差のある外角スプリットで三振を奪った。2回に崩れ、無死満塁としても連続三振で2死までこぎつけた。打者を睨むような気迫の表情で捕手のサインをのぞき、声を唸らせて腕を振った。登板前日に「自分の持っているものをどれだけ出せるかが試合の中で重要になってくるので、その中でメンタルが大事かなと思ってます」と語ったように、表情にも気持ちの強さが表れていた。

 改善点や今後へ光が見えた場面もあった。それだけに、右腕の違和感を訴え、MRI検査を受ける結果になったことは、大谷自身が最も悔しさを感じているだろう。検査の結果は右回内屈筋群の損傷。打者としての出場は状態次第で可能とのことだが、投球再開には4~6週間を要するとのことで、今季のマウンド復帰にも暗雲が立ち込めてきた。

 二刀流の完全復活へ向けて挑んだ異例の60試合シーズン。再び高い壁が立ちはだかった。

文●斎藤庸裕

【著者プロフィール】
さいとう・のぶひろ。1983年、埼玉県生まれ。日刊スポーツ新聞社でプロ野球担当記者を務めた後サンディエゴ州立大学でスポーツビジネスを学ぶ。2018年から大谷翔平の担当記者を務める。日刊スポーツでコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」を配信中。

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