タイガースが新監督を探している。今シーズンが就任3年目だったロン・ガーデンハイヤー監督は、健康上の理由から9月19日に球界を引退し、ツインズ時代を含めると16年にわたる監督歴にピリオドを打った。代わって指揮を執ったベンチコーチのロイド・マクレンドンも監督経験者だが、あくまでも代行に過ぎず、続投する可能性はまずない。
アル・アビーラGMは、新たな監督をじっくりと選ぶつもりらしい。10月2日のオンライン会見で「10月中に決まる可能性もあるが、11月になるかもしれない」と語った。多くの候補を検討する意向で、前アストロズ監督のAJ・ヒンチと前レッドソックス監督のアレックス・コーラも「リストに入っている」と明かした。
この2人は、サイン盗みスキャンダルで昨オフに監督の座を追われた。2017年のアストロズでヒンチは監督、コーラはベンチコーチを務めていた。コーラはそのオフにレッドソックスの監督に就任。アストロズと同じく、18年のレッドソックスもサインを盗んでいた。彼らはどちらも、MLB機構に今年のワールドシリーズが終わるまでの職務停止を科された後、それぞれの球団から解任されている。ちなみに、17年のアストロズと18年のレッドソックスは、ワールドシリーズで優勝した。ただし、レッドソックスのサイン盗みは、レギュラーシーズンだけだったようだ。
もしヒンチかコーラがタイガースの監督に就任した場合、批判の声が出るのは間違いないだろう。ただ、アビーラGMは「もちろん、不正行為は良くない。だが、彼らは処分を受けた。それが終われば制約はない。現時点では誰も候補から排除はしない」と発言している。賛否はさておき、この意見にも一理ある。選手が禁止薬物を使用しても、出場停止処分が終われば復帰できるのと同じだ。ちなみに、ヒンチが03年にタイガースでプレーした当時、アビーラはGM補佐を務めていた。コーラも17年オフにタイガースの監督候補に挙がっていた。
なお、サイン盗みに関連し、昨オフに監督の職を失ったのはヒンチとコーラだけではない。カルロス・ベルトランもそうだ。昨年11月にメッツの監督に就任したものの、試合で采配を振ることなく翌年1月に辞任した。MLB機構から処分を科されたわけではないが、ベルトランは選手生活の最後を過ごした17年のアストロズで、サイン盗みの中心的役割を果たしたと言われている。
ヒンチやコーラがスキャンダルにもかかわらず監督候補に挙がるのは、人心掌握術や戦略眼を含め、指揮官として高い評価を集めているからだ。だが、ベルトランは監督として未知数。そこにサイン盗みの汚名が加わっただけに、少なくとも当面の間は声をかけるチームは出ないだろう。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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アル・アビーラGMは、新たな監督をじっくりと選ぶつもりらしい。10月2日のオンライン会見で「10月中に決まる可能性もあるが、11月になるかもしれない」と語った。多くの候補を検討する意向で、前アストロズ監督のAJ・ヒンチと前レッドソックス監督のアレックス・コーラも「リストに入っている」と明かした。
この2人は、サイン盗みスキャンダルで昨オフに監督の座を追われた。2017年のアストロズでヒンチは監督、コーラはベンチコーチを務めていた。コーラはそのオフにレッドソックスの監督に就任。アストロズと同じく、18年のレッドソックスもサインを盗んでいた。彼らはどちらも、MLB機構に今年のワールドシリーズが終わるまでの職務停止を科された後、それぞれの球団から解任されている。ちなみに、17年のアストロズと18年のレッドソックスは、ワールドシリーズで優勝した。ただし、レッドソックスのサイン盗みは、レギュラーシーズンだけだったようだ。
もしヒンチかコーラがタイガースの監督に就任した場合、批判の声が出るのは間違いないだろう。ただ、アビーラGMは「もちろん、不正行為は良くない。だが、彼らは処分を受けた。それが終われば制約はない。現時点では誰も候補から排除はしない」と発言している。賛否はさておき、この意見にも一理ある。選手が禁止薬物を使用しても、出場停止処分が終われば復帰できるのと同じだ。ちなみに、ヒンチが03年にタイガースでプレーした当時、アビーラはGM補佐を務めていた。コーラも17年オフにタイガースの監督候補に挙がっていた。
なお、サイン盗みに関連し、昨オフに監督の職を失ったのはヒンチとコーラだけではない。カルロス・ベルトランもそうだ。昨年11月にメッツの監督に就任したものの、試合で采配を振ることなく翌年1月に辞任した。MLB機構から処分を科されたわけではないが、ベルトランは選手生活の最後を過ごした17年のアストロズで、サイン盗みの中心的役割を果たしたと言われている。
ヒンチやコーラがスキャンダルにもかかわらず監督候補に挙がるのは、人心掌握術や戦略眼を含め、指揮官として高い評価を集めているからだ。だが、ベルトランは監督として未知数。そこにサイン盗みの汚名が加わっただけに、少なくとも当面の間は声をかけるチームは出ないだろう。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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