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MLB

タイガースが来季に向けて新監督を選定中。サイン盗みスキャンダルで解任した2人の“元監督”も候補に

宇根夏樹

2020.10.10

ヒンチ(左)とコーラ(右)は昨オフ発覚したサイン盗みスキャンダルによって職を追われたが、ともに世界一監督になった経験があるなど手腕には定評がある。(C)Getty Images

ヒンチ(左)とコーラ(右)は昨オフ発覚したサイン盗みスキャンダルによって職を追われたが、ともに世界一監督になった経験があるなど手腕には定評がある。(C)Getty Images

 タイガースが新監督を探している。今シーズンが就任3年目だったロン・ガーデンハイヤー監督は、健康上の理由から9月19日に球界を引退し、ツインズ時代を含めると16年にわたる監督歴にピリオドを打った。代わって指揮を執ったベンチコーチのロイド・マクレンドンも監督経験者だが、あくまでも代行に過ぎず、続投する可能性はまずない。

 アル・アビーラGMは、新たな監督をじっくりと選ぶつもりらしい。10月2日のオンライン会見で「10月中に決まる可能性もあるが、11月になるかもしれない」と語った。多くの候補を検討する意向で、前アストロズ監督のAJ・ヒンチと前レッドソックス監督のアレックス・コーラも「リストに入っている」と明かした。

 この2人は、サイン盗みスキャンダルで昨オフに監督の座を追われた。2017年のアストロズでヒンチは監督、コーラはベンチコーチを務めていた。コーラはそのオフにレッドソックスの監督に就任。アストロズと同じく、18年のレッドソックスもサインを盗んでいた。彼らはどちらも、MLB機構に今年のワールドシリーズが終わるまでの職務停止を科された後、それぞれの球団から解任されている。ちなみに、17年のアストロズと18年のレッドソックスは、ワールドシリーズで優勝した。ただし、レッドソックスのサイン盗みは、レギュラーシーズンだけだったようだ。
 
 もしヒンチかコーラがタイガースの監督に就任した場合、批判の声が出るのは間違いないだろう。ただ、アビーラGMは「もちろん、不正行為は良くない。だが、彼らは処分を受けた。それが終われば制約はない。現時点では誰も候補から排除はしない」と発言している。賛否はさておき、この意見にも一理ある。選手が禁止薬物を使用しても、出場停止処分が終われば復帰できるのと同じだ。ちなみに、ヒンチが03年にタイガースでプレーした当時、アビーラはGM補佐を務めていた。コーラも17年オフにタイガースの監督候補に挙がっていた。

 なお、サイン盗みに関連し、昨オフに監督の職を失ったのはヒンチとコーラだけではない。カルロス・ベルトランもそうだ。昨年11月にメッツの監督に就任したものの、試合で采配を振ることなく翌年1月に辞任した。MLB機構から処分を科されたわけではないが、ベルトランは選手生活の最後を過ごした17年のアストロズで、サイン盗みの中心的役割を果たしたと言われている。

 ヒンチやコーラがスキャンダルにもかかわらず監督候補に挙がるのは、人心掌握術や戦略眼を含め、指揮官として高い評価を集めているからだ。だが、ベルトランは監督として未知数。そこにサイン盗みの汚名が加わっただけに、少なくとも当面の間は声をかけるチームは出ないだろう。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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