プロ野球

楽天・石井監督は何人目?″元メジャーリーガー”のプロ野球監督列伝

宇根夏樹

2020.11.22

右はドジャース時代の石井。ラミレス(左)はインディアンスとパイレーツでメジャー通算135試合に出場した。(C)Getty Images

 来シーズンの楽天は、石井一久が監督を務める。ゼネラルマネージャーを兼任しながら、ユニフォームを着て采配を振るうのだ。

 元日本メジャーリーガーの監督就任は、石井が3人目だ。彼の前の2人も現役の監督で、井口資仁は2018年からロッテを率い、高津臣吾は今シーズンからヤクルトを指揮している。ちなみに、NPBではないものの、BCリーグの福島レッドホープスで球団代表と監督を兼任する岩村明憲もまた、元メジャーリーガーだ。

 日本人選手に限らなければ、NPBで監督として采配を振るった元メジャーリーガーは、他にも何人かいる。今シーズン限りで横浜DeNAを退団したアレックス・ラミレスもその一人だ。16年からの5年間でリーグ優勝は皆無ながら、クライマックスシリーズへ3度進出し、17年は日本シリーズまで駒を進めた。メジャーではトニー・ラルーサ監督(現ホワイトソックス)やジョー・マッドン監督(現エンジェルス)らが得意としていた「8番・投手」のラインナップを、ラミレスもしばしば用いた(ラミレスは両監督の下でプレーしたことはないが)。
 
 ラミレス以外では過去に、ジョー・ルーツ(1975年/広島)、ドン・ブレイザー(79~80年/阪神、81~82年/南海)、ボビー・バレンタイン(95、04~09年/ロッテ)、マーティ・ブラウン(06~09年/広島、10年/楽天)がいる。選手としてはメジャーデビューを果たせなかった元マイナーリーガーの監督には、トレイ・ヒルマン(03~07年/日本ハム)とテリー・コリンズ(07~08年/オリックス)、そして、03年途中からオリックスで指揮を執ったレオン・リーがいる。

 彼らのうち、バレンタインは05年、ヒルマンは06年に日本シリーズ制覇を達成。ルーツは赤ヘル黄金時代の礎を築いた人物で、衣笠祥雄を三塁へコンバートしたり、高橋慶彦をスイッチヒッターに転向させるなど、アメリカ仕込みの改革手腕を大いに発揮。持ち前の気性の激しさが災いしてシーズン途中に退任したが、広島はこの年、球団初のリーグ優勝を成し遂げた。バレンタイン、ヒルマン、コリンズの3人はその後、MLBの球団でも指揮を執り、バレンタインは00年にメッツをリーグ優勝へ導いている。

 なお、76年には太平洋クラブライオンズ(現西武ライオンズ)が、MLB歴代10位の監督通算2008勝を挙げた名将レオ・ドローチャーを監督に招聘したことがある。実際に契約まではこぎ着けたのだが、来日直前にドローチャーが病に倒れて実現しなかった。

 また、96年には、当時暗黒時代真っただ中の阪神がレッズとタイガースでメジャー史上初の両リーグ世界一を成し遂げた通算2194勝(歴代6位)のスパーキー・アンダーソンに監督のオファーを出した。アンダーソンは乗り気で契約寸前までいったそうなのだが、結局夫人の猛反対で断念。たとえどちらかでも実際に来日していれば、NPBの歴史が変わっていたかもしれないだけに残念だ。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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