[日本シリーズ第2戦]ソフトバンク13-2巨人/11月22日/京セラドーム大阪
戦前に想定しうる試合展開の結果になった。
日本シリーズ第2戦は、ソフトバンクが13対2で大勝を収めた。
実績の少ない投手が、シリーズ開幕戦の敗戦を受けてマウンドに立つ。これは大きな賭けであり序盤から試合の大勢が決まってしまう可能性はあったが、前日、エースの菅野智之で敗北を喫した巨人がこの日の先発に立てた日本シリーズ初先発の今村信貴は、2回持たずに降板。戦前に予感もあった通りになってしまった。
【日本シリーズPHOTO】巨人2‐13ソフトバンク|デスパイネが満塁弾含む6打点と大暴れ!ソフトバンクが巨人に連勝!
もっとも、試合の勝敗だけが問題ではない。
巨人側からすれば、抜擢した今村が好投を見せてくれるのが理想だった。だが、たとえそうならなかったとしても、日本シリーズは3試合までなら負けてもいい。その中で次につながる希望を見出せれば、それはのちに正解へと変わるかもしれない。
だが、結局今村は2回途中4失点の炎上で早々に降板。その後も巨人が送り込んだ投手たちは次々と打たれ、結局、被安打15、13失点という惨憺たる結果に終わった。しかも何よりの痛手は、敗戦したこと以上に「一矢報いる」という希望が見出せなかったことだろう。
確かに、序盤からソフトバンクのペースで試合は進んだ。だが、巨人にまったくチャンスがなかったわけではない。
6回の攻撃で、巨人打線はそれまで5回を2安打2失点に抑える好投を見せていたソフトバンクの先発、石川柊太を打ち込んだ。1死から3番の坂本勇人が目の覚めるような打球を中前へ運んで出塁。続く4番の岡本和真は、詰まりながらもセンター前へ落として、1死一、二塁の好機を作った。打席には5番の丸佳浩。ここで追加点を挙げられていれば、巨人は次につながる希望を見出すことができたかもしれない。
ところが、ソフトバンク・工藤公康監督が、ここで継投策に打って出る。丸はワンポイントで登場した嘉弥真新也の前に、あっさりと空振り三振を喫してしまう。さらにピッチャーが高橋礼に代わった直後、代打の田中俊太がしぶとく四球を選んで出塁したにもかかわらず、2死満塁で打席に立った中島宏之も空振り三振に倒れ、反撃のチャンスをみすみす潰してしまったのだ。
もちろん、丸か中島に一打が出ていたとしても、試合をひっくり返せたかどうかは分からない。だが、盤石を誇るソフトバンク救援陣に反撃することが、第3戦以降につながるのは間違いない。しかし、それができなかった。
逆に言えば、巨人にそれをさせなかったのは、ソフトバンクの工藤公康監督の采配だった。石川の球数はまだ90球に達しておらず、その時点ですでに5点差がついていた。それまでの好投を考えれば、続投でも違和感はない。だが、あっさりと投手交代を決断した。こうした先手先手の采配を打つのが工藤監督の眼力なのである。
工藤監督は、試合後にこう振り返っている。
「7回以降の継投は決まっていたので、もし(石川が)あの場面で点を取られたとしても、1、2点なら許容範囲ではあった。でも、6回で1点差や同点になるのが嫌だったので、早め早めに投手交代をして(流れを)切れればと思いました。嘉弥真が丸を描いた通りの三振に抑えたことが、非常に大きかったと思う」
絶妙な工藤采配で流れを切られた巨人は、その後も一矢報いることすらできないまま、7回にデスパイネに満塁弾を浴びて完敗してしまった。負けられるのはあと1回。それまでに巨人は、逆転日本一への希望を見出すことができるのだろうか。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。野球指導者のためのオンラインサロンの運営にも携わっている
戦前に想定しうる試合展開の結果になった。
日本シリーズ第2戦は、ソフトバンクが13対2で大勝を収めた。
実績の少ない投手が、シリーズ開幕戦の敗戦を受けてマウンドに立つ。これは大きな賭けであり序盤から試合の大勢が決まってしまう可能性はあったが、前日、エースの菅野智之で敗北を喫した巨人がこの日の先発に立てた日本シリーズ初先発の今村信貴は、2回持たずに降板。戦前に予感もあった通りになってしまった。
【日本シリーズPHOTO】巨人2‐13ソフトバンク|デスパイネが満塁弾含む6打点と大暴れ!ソフトバンクが巨人に連勝!
もっとも、試合の勝敗だけが問題ではない。
巨人側からすれば、抜擢した今村が好投を見せてくれるのが理想だった。だが、たとえそうならなかったとしても、日本シリーズは3試合までなら負けてもいい。その中で次につながる希望を見出せれば、それはのちに正解へと変わるかもしれない。
だが、結局今村は2回途中4失点の炎上で早々に降板。その後も巨人が送り込んだ投手たちは次々と打たれ、結局、被安打15、13失点という惨憺たる結果に終わった。しかも何よりの痛手は、敗戦したこと以上に「一矢報いる」という希望が見出せなかったことだろう。
確かに、序盤からソフトバンクのペースで試合は進んだ。だが、巨人にまったくチャンスがなかったわけではない。
6回の攻撃で、巨人打線はそれまで5回を2安打2失点に抑える好投を見せていたソフトバンクの先発、石川柊太を打ち込んだ。1死から3番の坂本勇人が目の覚めるような打球を中前へ運んで出塁。続く4番の岡本和真は、詰まりながらもセンター前へ落として、1死一、二塁の好機を作った。打席には5番の丸佳浩。ここで追加点を挙げられていれば、巨人は次につながる希望を見出すことができたかもしれない。
ところが、ソフトバンク・工藤公康監督が、ここで継投策に打って出る。丸はワンポイントで登場した嘉弥真新也の前に、あっさりと空振り三振を喫してしまう。さらにピッチャーが高橋礼に代わった直後、代打の田中俊太がしぶとく四球を選んで出塁したにもかかわらず、2死満塁で打席に立った中島宏之も空振り三振に倒れ、反撃のチャンスをみすみす潰してしまったのだ。
もちろん、丸か中島に一打が出ていたとしても、試合をひっくり返せたかどうかは分からない。だが、盤石を誇るソフトバンク救援陣に反撃することが、第3戦以降につながるのは間違いない。しかし、それができなかった。
逆に言えば、巨人にそれをさせなかったのは、ソフトバンクの工藤公康監督の采配だった。石川の球数はまだ90球に達しておらず、その時点ですでに5点差がついていた。それまでの好投を考えれば、続投でも違和感はない。だが、あっさりと投手交代を決断した。こうした先手先手の采配を打つのが工藤監督の眼力なのである。
工藤監督は、試合後にこう振り返っている。
「7回以降の継投は決まっていたので、もし(石川が)あの場面で点を取られたとしても、1、2点なら許容範囲ではあった。でも、6回で1点差や同点になるのが嫌だったので、早め早めに投手交代をして(流れを)切れればと思いました。嘉弥真が丸を描いた通りの三振に抑えたことが、非常に大きかったと思う」
絶妙な工藤采配で流れを切られた巨人は、その後も一矢報いることすらできないまま、7回にデスパイネに満塁弾を浴びて完敗してしまった。負けられるのはあと1回。それまでに巨人は、逆転日本一への希望を見出すことができるのだろうか。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。野球指導者のためのオンラインサロンの運営にも携わっている