今年のトライアウトは例年とは一味違う空気感だった。2006年に現役を引退し、昨年11月に再びNPB復帰を目指すと表明した新庄剛志が参加したからだ。
前代未聞の挑戦に、球場内に入れない一般のファンが外から声援を送られるなど、世間の関心を集めていた。シートノックでは三塁に入り、軽快な動きを披露。ひとり一塁側ブルペンのバッターボックスで入念に素振りを繰り返すなど、気合いはヒシヒシと伝わってきた。
注目の第1打席は、初球143キロの速球を積極的にスウィングしたがセカンドゴロ、2打席目は3球ボールを選び“四球”で出塁(トライアウトはカウント1―1から始まる特別ルールのため)した。結果は打者の“勝利”ではあったものの、打ってアピールしたい気持ちが、思わず天を仰いだ形で表れた。
休憩明けいきなりの3打席目は、2球目の143キロの速球をジャストミートできずセカンドゴロ。残りは1打席のみ。走者一、二塁のチャンスで回ってきた最終4打席目、ここで新庄は現役時代を彷彿とさせる千両役者ぶりを見せつける。左腕ジュリアスの126キロ外角の変化球をレフト前に放つ、見事なタイムリーヒットを記録したのだ。
トライアウトの資料には、「プロ野球選手として必要な『オーラ』を出すことを常に考え、視線を釘付けにするプレーを意識」と新庄は自らのアピールポイントとした。その言葉通りの活躍に、関係者や報道陣からは「さすが」の声が漏れた。
“挑戦”を終えた新庄は、「1打席目の真っ直ぐは先っぽで、その後は見過ぎた。4打席目はランナーがいたので『よっしゃー! オレを見ろ』」との思いで打席へ入り、見事に結果を出した。「打った後、ヒットゾーンに飛んだ感じ」が残像として頭にあると喜び、「いい当たりをしよう。いいキャッチボールをしよう」と考えた結果のヒットだったと強調。
バットも「現役時代と一緒のメーカーで、アメリカにオーダーして作ってもらった」と明かしたが、「どんなバットだって気持ちを入れて芯に当てればいい。気持ちです!」と最後は自身の最大の武器“ハート”が、チャンスでの一打につながったと力説した。
バッターボックスに立つと、「今までにない感情」が沸き起こり、「結果は意識せず、ホームラン打ちたい気持ちにもならなかった。立てたことが嬉しかった。ボールに集中しなければならないのに、バリに行って、1人でやってと考えたら込み上げてくるものがあった」。ただ、「お客さんの中でプレーしたかった。観客動員の数で、数字も全然違うので」と“新庄節”も飛び出し、笑いを誘ったのも、さすがスターらしい対応と言えるだろう。
48歳のチャレンジに「14年間(野球から)離れていても、1年間、自分に勝って努力すれば結果が出せると、みんなも少しだけ思ってくれれば」と諦めない気持ちの大切さを説いた。また「6日間でオファーが来なかったら野球は終わり。よし! 1年間お疲れ様でした、新庄剛志!」との気持ちで、運命の連絡を待つ構えだ。
取材・文●萩原孝弘
前代未聞の挑戦に、球場内に入れない一般のファンが外から声援を送られるなど、世間の関心を集めていた。シートノックでは三塁に入り、軽快な動きを披露。ひとり一塁側ブルペンのバッターボックスで入念に素振りを繰り返すなど、気合いはヒシヒシと伝わってきた。
注目の第1打席は、初球143キロの速球を積極的にスウィングしたがセカンドゴロ、2打席目は3球ボールを選び“四球”で出塁(トライアウトはカウント1―1から始まる特別ルールのため)した。結果は打者の“勝利”ではあったものの、打ってアピールしたい気持ちが、思わず天を仰いだ形で表れた。
休憩明けいきなりの3打席目は、2球目の143キロの速球をジャストミートできずセカンドゴロ。残りは1打席のみ。走者一、二塁のチャンスで回ってきた最終4打席目、ここで新庄は現役時代を彷彿とさせる千両役者ぶりを見せつける。左腕ジュリアスの126キロ外角の変化球をレフト前に放つ、見事なタイムリーヒットを記録したのだ。
トライアウトの資料には、「プロ野球選手として必要な『オーラ』を出すことを常に考え、視線を釘付けにするプレーを意識」と新庄は自らのアピールポイントとした。その言葉通りの活躍に、関係者や報道陣からは「さすが」の声が漏れた。
“挑戦”を終えた新庄は、「1打席目の真っ直ぐは先っぽで、その後は見過ぎた。4打席目はランナーがいたので『よっしゃー! オレを見ろ』」との思いで打席へ入り、見事に結果を出した。「打った後、ヒットゾーンに飛んだ感じ」が残像として頭にあると喜び、「いい当たりをしよう。いいキャッチボールをしよう」と考えた結果のヒットだったと強調。
バットも「現役時代と一緒のメーカーで、アメリカにオーダーして作ってもらった」と明かしたが、「どんなバットだって気持ちを入れて芯に当てればいい。気持ちです!」と最後は自身の最大の武器“ハート”が、チャンスでの一打につながったと力説した。
バッターボックスに立つと、「今までにない感情」が沸き起こり、「結果は意識せず、ホームラン打ちたい気持ちにもならなかった。立てたことが嬉しかった。ボールに集中しなければならないのに、バリに行って、1人でやってと考えたら込み上げてくるものがあった」。ただ、「お客さんの中でプレーしたかった。観客動員の数で、数字も全然違うので」と“新庄節”も飛び出し、笑いを誘ったのも、さすがスターらしい対応と言えるだろう。
48歳のチャレンジに「14年間(野球から)離れていても、1年間、自分に勝って努力すれば結果が出せると、みんなも少しだけ思ってくれれば」と諦めない気持ちの大切さを説いた。また「6日間でオファーが来なかったら野球は終わり。よし! 1年間お疲れ様でした、新庄剛志!」との気持ちで、運命の連絡を待つ構えだ。
取材・文●萩原孝弘