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マー君が語った「アメリカでやり残したこと」――ワールドシリーズ制覇の“難易度”を探る〈SLUGGER〉

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2021.02.01

今後も世界一を目指そうとしている田中(写真右)だが、ワールドシリーズへ出場した日本人選手は松井(左上)や上原&田澤(左下)ほか、数えるほどしかいない。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部/田中)、Getty Images(松井、田澤、上原)

 8年ぶりに楽天へ復帰した田中将大は、30日の会見で力強くこう語っていた。

「アメリカでやり残したことがあると思っている」

 やり残したこととは当然、「ワールドシリーズ制覇」だろう。7年前のヤンキース入団会見で「世界一になるためにここに来た」と語っていたし、2017年にオプトアウトせず残留を選択したのも、それを果たすためだった。

 しかし、ヤンキースは田中が在籍していた7年間でポストシーズンに5回進出をしながらも、ワールドシリーズ制覇はおろかリーグ優勝もできなかった。もっとも、田中自身はポストシーズンで何度も神がかり的なピッチングを見せていた。ただそれでも、チームを頂上決戦に導けなかったことには、忸怩たる思いがあるはずだ。

 とはいえ、そもそもワールドシリーズ進出自体がかなりの難業であるのも確かだ。これまでにメジャーでプレーした62人の日本人選手のうち、ワールドシリーズの大舞台でプレーできたのは14人しかいない。ワールドチャンピオンにまで上り詰めた選手はさらに少なく、05年の井口資仁(当時シカゴ・ホワイトソックス)を皮切りに、田口壮(06年/セントルイス・カーディナルス)、松坂大輔、岡島秀樹(ともに07年/ボストン・レッドソックス)、松井秀喜(09年/ニューヨーク・ヤンキース)、田澤純一、上原浩治(ともに13年/レッドソックス)の7人だけである。
 
 この中で最も鮮烈な印象を残したのは、やはり目下ヤンキース最後のワールドシリーズ出場、そして最後の世界一の立役者となった松井だろう。松井は渡米1年目の03年にもワールドシリーズへ出場したが、この時はフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)に敗れて苦杯を舐めた。

 そして、09年に2度目のシリーズ出場を果たした際は、そのうっぷんを晴らすかのように、2連覇を目指すフェイラデルフィア・フィリーズ相手に6試合で打率.615、3本塁打8打点と大暴れ。ヤンキースを9年ぶりの世界一へ導くとともに、アジア人初のワールドシリーズMVPを受賞した。

 松井に次ぐ活躍でチームを世界一に導いたのが、13年にレッドソックスで世界一メンバーとなった上原浩治と田澤純一の日本人リリーバーコンビだ。カーディナルスとのワールドシリーズで、2人は揃って5試合ずつに登板して無失点と好投。田澤は勝利の方程式の一角として2ホールド、上原はクローザーとして2セーブを挙げた上に、"胴上げ投手"という栄誉も味わっている。
 
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