今オフ最高のFAだったトレバー・バウアーが、ドジャースと3年1億200万ドルの契約を交わした。その内訳は、契約金が1000万ドル、2021年の年俸が2800万ドル、22年と23年が各3200万ドルだ。
総額1億ドル以上の契約は、バウアーの前に延べ80人以上が得ている(延長契約を含む)。最も高額なマイク・トラウト(エンジェルス)の12年4億2650万ドルと比べると、バウアーの総額は4分の1にも届かない。今オフに限っても、ジョージ・スプリンガー(ブルージェイズ)の6年1億5000万ドルとJT・リアルミュート(フィリーズ)の5年1億1550万ドルに次ぐ3位だ。ただ、3年以下の契約期間で総額1億ドル以上は史上初だ。年平均3400万ドルは歴代5位に位置する。
さらに、バウアーの契約には2つのオプトアウトがついている。これによって、21年のオフと22年のオフのいずれも、バウアーは契約を打ち切ってFAになることができるのだ。これがあることで、契約内容はさらに複雑になっている。
まず、契約1年目の終了時(21年のオフ)にオプトアウトした場合、バウアーが得る総額は、契約金1000万ドルと21年の年俸2800万ドルに解約金200万ドルを足した、4000万ドルとなる。契約2年目の終了時(22年のオフ)にオプト・アウトすると、契約金1000万ドル、21年の年俸2800万ドル、22年の年俸3200万ドル、解約金1500万ドルの合計で、総額は8500万ドルだ。
21年オフはオプトアウトを見送ったとしても、22年のオフに行使する可能性はかなり高そうだ。そこでFA市場に出て、23年の年俸が1700万ドルを超える契約を手にすれば、8500万ドル+1700万ドル=1億200万ドルなので、21~23年の3年間の総額は、ドジャースと交わした3年1億200万ドルを上回る。
また、2年目終了後にオプトアウトすれば、今回の契約は年平均4250万ドル(2年8500万ドル)となり、現時点では最も高いゲリット・コール(ヤンキース)の年平均3600万ドル(9年3億2400万ドル)を凌ぐこととなる。ちなみに、コールとバウアーはUCLAの同期生で、2010年のドラフトでそれぞれ全体1位と3位で指名されたが、在学中から反目しあっていたことが知られている。
一方で、故障に見舞われるか不調に陥った場合は、オプト・アウトせずに残留すればいい。かつて、バウアーはFAになったらそこから毎回1年契約を交わすと発言していたが、この契約はそこからリスクを取り去った格好だ。メッツは総額にすると300万ドルも多い契約をバウアーに提示したというが、メッツの条件では2年目オフにオプトアウトしても2年総額8000万ドルにしかならない。いわばバウアーの選択は「損して得取れ」なのだ。
もちろん、この複雑な契約はドジャースにもメリットがある。契約金や解約金に加えて、繰り延べ払いの条件なども織り込み、年俸総額に占めるバウアーの年俸の割合をできるだけ抑えているのだ。バウアーはもちろん、ドジャースにとっても「損して得取れ」のこの契約には、双方のしたたかさがよく現れている。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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総額1億ドル以上の契約は、バウアーの前に延べ80人以上が得ている(延長契約を含む)。最も高額なマイク・トラウト(エンジェルス)の12年4億2650万ドルと比べると、バウアーの総額は4分の1にも届かない。今オフに限っても、ジョージ・スプリンガー(ブルージェイズ)の6年1億5000万ドルとJT・リアルミュート(フィリーズ)の5年1億1550万ドルに次ぐ3位だ。ただ、3年以下の契約期間で総額1億ドル以上は史上初だ。年平均3400万ドルは歴代5位に位置する。
さらに、バウアーの契約には2つのオプトアウトがついている。これによって、21年のオフと22年のオフのいずれも、バウアーは契約を打ち切ってFAになることができるのだ。これがあることで、契約内容はさらに複雑になっている。
まず、契約1年目の終了時(21年のオフ)にオプトアウトした場合、バウアーが得る総額は、契約金1000万ドルと21年の年俸2800万ドルに解約金200万ドルを足した、4000万ドルとなる。契約2年目の終了時(22年のオフ)にオプト・アウトすると、契約金1000万ドル、21年の年俸2800万ドル、22年の年俸3200万ドル、解約金1500万ドルの合計で、総額は8500万ドルだ。
21年オフはオプトアウトを見送ったとしても、22年のオフに行使する可能性はかなり高そうだ。そこでFA市場に出て、23年の年俸が1700万ドルを超える契約を手にすれば、8500万ドル+1700万ドル=1億200万ドルなので、21~23年の3年間の総額は、ドジャースと交わした3年1億200万ドルを上回る。
また、2年目終了後にオプトアウトすれば、今回の契約は年平均4250万ドル(2年8500万ドル)となり、現時点では最も高いゲリット・コール(ヤンキース)の年平均3600万ドル(9年3億2400万ドル)を凌ぐこととなる。ちなみに、コールとバウアーはUCLAの同期生で、2010年のドラフトでそれぞれ全体1位と3位で指名されたが、在学中から反目しあっていたことが知られている。
一方で、故障に見舞われるか不調に陥った場合は、オプト・アウトせずに残留すればいい。かつて、バウアーはFAになったらそこから毎回1年契約を交わすと発言していたが、この契約はそこからリスクを取り去った格好だ。メッツは総額にすると300万ドルも多い契約をバウアーに提示したというが、メッツの条件では2年目オフにオプトアウトしても2年総額8000万ドルにしかならない。いわばバウアーの選択は「損して得取れ」なのだ。
もちろん、この複雑な契約はドジャースにもメリットがある。契約金や解約金に加えて、繰り延べ払いの条件なども織り込み、年俸総額に占めるバウアーの年俸の割合をできるだけ抑えているのだ。バウアーはもちろん、ドジャースにとっても「損して得取れ」のこの契約には、双方のしたたかさがよく現れている。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
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