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「健康第一」は単なるタテマエ? MLB機構vs選手会の仁義なき「日程議論」の裏側【豊浦彰太郎のベースボール一刀両断!】

豊浦彰太郞

2021.02.26

ロブ・マンフレッド・コミッショナー(右)がトップのMLB機構と、トニー・クラーク専務理事(左)を中心とする選手会。この両者の対立が、今回のコロナ禍であらためて浮き彫りに。(C)Getty Images

 スーパーボウルが終わると、ベースボール・シーズンの幕開けだ。2月1日、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは、予定通り2月中旬にスプリング・トレーニングを開始し、4月1日にレギュラーシーズンを開幕させることを宣言した。しかし、そこに至る今季の日程議論は最初から不可思議だった。

 1月29日、MLB機構はスプリング・トレーニング開始と開幕をそれぞれ約1か月遅らせる旨を選手会に提案。そこには、プレーオフ出場枠の拡大や両リーグでのDH制もセットになっていた。その1か月の猶予が選手や関係者、そしてファンへのワクチン接種浸透を可能にし、感染拡大のリスク低減や有観客試合開催につながるというのが延期を求める理由だ。その分、レギュラーシーズン終了は約10日間遅れるが、試合数を各球団162から154に減らすことで日程消化は可能だとした。そして、選手に対しては8試合分のサラリー減は適用しない、とも。
 一見もっともな提案だ。しかし、選手会はこれを拒否した。1か月遅れの開幕による過密日程に起因する故障のリスクを理由に挙げていたが、「健康」に言及するなら、感染拡大回避のほうがはるかに優先順位が高いはずだ。

 新型コロナウイルス感染は重大な健康被害につながる恐れがあることは言うまでもない。アメリカでは連日、数千人が死亡している。特に高齢者や基礎疾患を持つ者にはリスクが高い。メジャーリーガーは健康な若者がメインだが、監督やコーチには高齢者も多い。

 いや、若いメジャーリーガーとて安心はできない。昨季のナ・リーグMVPのフレディ・フリーマン(ブレーブス)は開幕前に感染し、一時はかなり危険な状況に陥ったという。また、レッドソックスの左腕エデュアルド・ロドリゲスはコロナ感染から心筋炎を発症してシーズンを全休した。