プロ野球

山賊打線に火が付くか、エース千賀で王手をかけるか。CSファイナル第3戦がいつも以上に大事なワケ

氏原英明

2019.10.11

西武打線の終盤の粘りは好材料。第3戦に向けて調子は上がっていくはずだ。写真:朝日新聞社

 終盤の攻防を見ながら、このシリーズがどこへ向かおうとしているのかが、わからなくなった。

 西武の先発・今井達也の乱調につけ込んだソフトバンクの猛攻は見事だった。前日の勢いをそのままにしての4回7得点は、昨季のCSファイナルを想起させるもので、今年もソフトバンクの圧勝なのかとさえ思えた。

 ソフトバンクが8−6で破って対戦成績で大きくリードしたのは事実だが、4回裏に外崎修汰の一発が飛び出してからの展開にシリーズの趨勢がまだ数度傾いただけに過ぎないのかもしれない気がした。

 試合は1回からソフトバンクのゲームだった。
 1回、1番の牧原大成が左翼前安打で出塁、2番の今宮健太が犠打で進めると、その後2死1、3塁となって、スタメンに抜擢の5番・中村晃が右翼前にはじき返して1点を先制した。

 2回に牧原の犠飛で1点を加えると、3回には柳田悠岐、デスパイネの連続長打で追加点、中村が右翼スタンドへ突き刺さる2点本塁打を放ち、さらに二死1塁から高谷にも適時打が出て6−0とした。

 投げても、先発の武田翔太が1回を三者凡退でスタートする立ち上がりを見せると、3回までノーヒットピッチングで、試合を優位に進めた。

 前日はスタメンを外れていた中村が3打点の活躍をすれば、1勝1敗としたことでこの日の先発起用になった武田が好投を見せる。選手層の厚みを感じさせる戦いぶりは、個人の差よりも、組織としての違いを見せつけるものだった。
 
 もっとも、ソフトバンクの選手たちが何か大きなことをしようとしていたわけではない。

 シンプルに「自分たちができることをやりきる」姿勢を貫き続けた。

 走塁を見れば顕著だが、どの選手も隙がないのが見て取れるのだ。

 例えば、2回の追加点。
1死一、三塁から牧原の犠牲フライで1点が入ったが、この好機を作るまでの展開では、1死から松田が四球で歩くと、9番・高谷の左翼前安打の間に、一塁走者の松田が三塁を陥れる好走塁があった。3回にしても、先頭の柳田の二塁打は右中間の間にポトリと落ちたものだが、当たり前のようにセカンドを陥れている。

 シーズンを長く戦っていれば、メットライフドームの形状がどういうもので、この打球ならばという判断が常にできている。当たり前のことなのだが、その徹底力がハンパではない。

 1回表、1死二塁で一塁ゴロを放った柳田が、一度はファウルと思って、足を止めた後、フェアになり走り出したということがあった。一塁ゴロだから、慌てて走ったところでセーフにはならないのだが、フェアグラウンドに転がったならば、最後までプレーをやめるべきではないという姿勢に見えた。