プロ野球

「山田は普通でいい」と元監督も太鼓判!新キャプテン山田哲人の“通常運転“がヤクルトにもたらす好影響

井上尚子

2021.02.28

山田はキャンプ最終部の練習試合で、阪神の先発チェンから本塁打を放った。写真:井上尚子

 今日のアーチも見事だった。

 ヤクルトの山田哲人は、キャンプ最終日の練習試合(28日 ANA BALLPARK 浦添)で、阪神の先発チェンから練習試合2本目となるソロホームランを放った。

 その袖にキャプテンマークがあることを、ともすれば忘れてしまいがちになる。

 2021年、山田はヤクルトのキャプテンとなった。しかも自分から監督に申し出たということに、多くのファンが驚いた。

 去年までは、山田が先頭に立って何かをしたり、大きな声で他の選手を鼓舞したりという姿はほとんど見られなかった。それは今年も変わらないのだろう。ランニングの先頭に立つわけでもなく、大きな声を上げてもいない。キャンプも今日で終わりという日になっても、淡々と村上とキャッチボールをして、セカンドでノックを受ける。試合前の声出しを塩見が担当すれば、みんなでいじって笑う輪の中に彼はいる。

 4番村上は、今シーズンも不動の趣がある。この日も阪神の先発チェン、二番手のガンケル、四番手・伊藤将からヒットを打って、3打数3安打。好調を持続している。
 
 村上の前を打つ3番に、今年も山田は座ることになるだろう。その山田に本塁打が生まれたのは、初回だった。2-2からチェンの投じた5球目を、レフトスタンドに運んだ。練習試合で2本目の本塁打を放ち、淡々とベースを一周した。

 23日の巨人戦で1本目の本塁打を打った時、山田は調子を「普通」と言い、解説の真中満氏は、「山田は普通でいいんですよ」と語っていた。山田の「普通」が続くことが、本人にもチームにも一番良いのかもしれない。

 課題はやはり、不調を少なくし、体のコンディションを保つことだ。

 この日、2回の守備を終えたあと、山田はことさらゆっくりと引き上げ、3回の守備からは宮本に交代した。高津監督は試合後、「足の治療をした。軽症で、次のオープン戦には出る予定」と説明し、「状態は100じゃないんです。それでも打つのが素晴らしいですね。監督が素晴らしいって言ったら、具体性がなくて申し訳ないんですけど」と付け加えた。

 山田が常に大声を張り上げることは、恐らく今後もないかもしれない。しかし村上も内川も、そして青木もよく声を出し、グラウンドには活気がある。そのチームにあって、山田がキャプテンとしてシーズンを過ごすことは、今までにないプラスアルファを生み出す要素となるはずだ。

 山田のキャプテンマークには、Cの文字と燕の姿が意匠として用いられている。控えめに、普通に、しかし大きな存在感を持って、今年の山田哲人は羽ばたいてくれるはずだ。

取材・文●井上尚子

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