高校野球

【氏原英明の本音で勝負!】球児の成長機会を奪う春季都大会の一次予選中止。高野連の考える「平等性」とは何なのか

氏原英明

2021.03.10

一次予選が中止になったことで、多くの高校が公式戦の機会を奪われることになった(写真は昨年秋の都大会)。写真:産経新聞社

 改めて、高校野球は不平等だなと思った。

 東京都高野連が春季都大会の一次予選の中止を決めたことだ。

 もっとも、これは都大会自体の中止を意味しない。都大会の本戦は行うが、一次予選を行わず上位チームのみで開催するということらしい。

 新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言が伸びたことで、全日程を消化できないと考え、大会の規模を縮小。そのために一次予選を削ったというわけだ(出場チームは昨秋と同じ)。5月に開催される春季関東大会に出場する都代表を決めたいという想いもあっただろう。

 優勝校を決めることを優先するために、一次予選をカット。大袈裟な表現が許されるならば、昨秋の都大会に出場できなかったチームは「春季大会から除外された」ということだ。
 
 高校野球が抱える大きな問題の一つに、公式試合の少なさがある。

 各都道府県の高野連が主催する大会は秋、春、夏と大きく3つあるが、多くがトーナメント戦であるため、一部の勝ち残ったチームしか試合経験を積めない。上位に進出できるような学校は試合数を数多くこなす一方、1回戦で敗退する学校は年間3試合しか公式戦ができない。試合を重ね、反省して、先につなげるという、この世代に必要な経験が平等に与えられていないのだ。

 サッカーなどではこうした不平等を解消する手段の一つとして、すでにリーグ戦を導入している。あるサッカージャーナリストによれば、「リーグ戦導入はトップのために効果が出たと言うより、下のレベルの層の選手たちがサッカーを楽しいと思ったまま卒業するきっかけになっている」と語っている。

 野球界は体質が古く、いつまでもチャンピオンを決めることばかりに囚われているから、今回のようなことが起きてしまうのだ。

 今回の決定は都大会のみの話だが、今後、他の県に飛び火する可能性も十分ある。

 東京都がこの判断を下したことで、同じく緊急事態宣言が発令されたままになっている埼玉県や神奈川県、千葉県も、同様の措置が検討されるだろう。
 
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球数制限からも見える高野連の場当たり的姿勢