２年ぶりの開催となった選抜高校野球。プロのスカウトも注目する選手が多いが、そのなかでも見事な活躍を披露した投手、野手を毎日その日のMVPとして選出していこう。

　大会第１日目は以下の選手となった。

■投手MVP
伊藤樹（仙台育英3年）：5回1/3、被安打0、無失点、６奪三振、２四球

　第１試合に登場した木村大成（北海）も前評判通りの投球を見せたが、この日その木村を上回る投球を見せたのが伊藤だ。1点をリードした４回裏、２死一、三塁の場面でマウンドに上がると、140キロ台のストレートを連発して相手エース・代木大和（明徳義塾）を空振り三振に切って取りピンチを脱出。その後も２つの四球と味方のエラーによる出塁はあったものの、最後まで明徳義塾打線にヒットを許さず、虎の子の1点を守り抜いてチームを勝利に導いた。

　元々左足を高く上げるフォームだったが、昨年秋よりもさらにその上げ方が大きくなり、それでいながら姿勢が崩れずにバランス良く腕を振れるのが大きい。体重移動のスピードも明らかにアップし、ストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークした（この日の最速は146キロ）。100キロ台のカーブで緩急をつけ、腕を振って投げられるスライダーの変化も鋭い。

　時折大きく抜けるボールはあったものの、捕手からの返球を受けるとすぐにモーションに入るテンポの良さも抜群。この日のような投球が続けば攻略するのは困難だろう。もう少しアベレージのスピードが上がり、頼れる変化球をもう一つマスターできれば、高校からのプロ入りも十分射程圏内に入りそうだ。
  ■野手MVP
浅野洸司（仙台育英3年／１番・二塁）：4打席３打数２安打１四球

　第１打席こそ代木大和（明徳義塾）のカットボールに三振を喫したものの、第２打席は鋭く弾き返してライト前ヒット。第３打席はしっかりボールを見極めて四球を選び、第４打席は追い込まれてからの外の変化球を右手一本で対応。レフト前に運び、計３度の出塁とトップバッターとしての役割をしっかり果たしてみせた。

　173㎝と上背はないものの下半身はたくましく、ゆったりとしたステップでボールを呼び込んでフルスウィングできるのが大きな持ち味。ボールを見る姿勢がいいので変化球にもなかなか崩されることがなく、打球の速さも申し分ない。先述した第４打席のヒットのように右手でリードできるバットコントロールの良さも出色だ。

　さらにヒットでも足を緩めることなく、２安打での一塁到達はいずれも4.2秒台をマークしている。第２打席の出塁後の盗塁は失敗したものの、脚力でも目立つ存在だ。打球を処理する機会は２回と少なかったものの、フットワークの良さと安定したスローイングも備えている。強打のトップバッターとして2回戦以降も打線を牽引する活躍を期待したい。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所（PABBlab）」でも多くの選手やデータを発信している。