オリックスの"負の遺産"は、初の開幕投手を務めた22歳の右腕でも吹き飛ばすことが出来なかった。3月26日、メットライフドームで行なわれた西武との今シーズンの開幕戦に、5年目の山本由伸が先発登板。強打の"山賊打線"に7回で、6安打4奪三振、1死球、4失点。2012 年のソフトバンク戦からの開幕戦の連敗(11年のソフトバンク戦は引き分け)は10に伸びてしまった。
改装された敵地で、初めて開幕戦のマウンドに立った山本。相性の良さを生かすはずだった。昨季、西武打線を104打数17安打、4打点、打率1割6分3厘に抑え、防御率は0.93。源田壮亮と外崎修汰の3安打が最多で、森友哉は10打数2安打、山川穂高は10打数1安打。本塁打は1本も許さなかった。
しかし、この日は1回にいきなりの2失点。一死2塁から3番・森友也を2ゴロに仕留めたが、太田椋が後逸し先制点を与えた。二死2塁からは暴投で走者を3進させた後、栗山巧に適時中前打を許した。「ピンチでは最少失点を心掛けている」という、いつものエースらしからぬ投球だった。3回、森に内角低めの145キロを右翼席に運ばれたのは、森が上手だったが、山川を遊ゴロ失で出塁させると栗山に中前打。2死後、中村剛也に三遊間を破られ、4点目を与えた。味方守備に足を引っ張られたとはいえ、エースとして踏ん張りたいところだった。
7回を投げ終え100球で降板したが、4回以降に出した走者は5回2死から栗山に与えた死球だけ。開幕投手に決まってから、「開幕戦にはしばらく勝っていない。とにかく勝つ姿を見せたい」「とにかく勝ちたい思いが強い」と勝利に強い思いを込めていた。開幕前日も「シーズンの出だしだけに大切な試合。明日は勝つ必要がある」と、有言実行を意識していたが、その責任感の分だけ力が入ってしまったのかもしれない。
この日の先発メンバーのうち、野手で昨季の開幕戦でスタメンだったのは吉田正尚とアダム・ジョーンズだけ。7年目の宗佑磨、佐野晧大を筆頭に、3年目の太田、頓宮裕真、2年目の紅林弘太郎とフレッシュな顔ぶれで臨んだ2021年のオリックス。二遊間に守りのミスも出たが、開幕戦の独特の緊張感の影響もあったことだろう。
打線は6回に吉田正のソロで反撃を開始。7回には頓宮もソロを放ち、8回は紅林、太田が安打でつないで好機を広げ、吉田正の遊ゴロの間に加点した。先頭のジョーンズが安打を放った9回無死1塁からは3者凡退。1点差に泣くことになったが、希望も垣間見えた試合だった。
試合後、山本は「1回に走者を出して、抑えなければと力が入った場面があった。よくないボールもあったが、途中からは修正してガタガタと崩れなかったのは良かった」と投球を振り返り、「今日負けたことは悔しいが、ここから始まる。早く切り替えて次に備えたい」と、前を見据えた。
文●北野正樹(フリーライター)
【著者プロフィール】
きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。
改装された敵地で、初めて開幕戦のマウンドに立った山本。相性の良さを生かすはずだった。昨季、西武打線を104打数17安打、4打点、打率1割6分3厘に抑え、防御率は0.93。源田壮亮と外崎修汰の3安打が最多で、森友哉は10打数2安打、山川穂高は10打数1安打。本塁打は1本も許さなかった。
しかし、この日は1回にいきなりの2失点。一死2塁から3番・森友也を2ゴロに仕留めたが、太田椋が後逸し先制点を与えた。二死2塁からは暴投で走者を3進させた後、栗山巧に適時中前打を許した。「ピンチでは最少失点を心掛けている」という、いつものエースらしからぬ投球だった。3回、森に内角低めの145キロを右翼席に運ばれたのは、森が上手だったが、山川を遊ゴロ失で出塁させると栗山に中前打。2死後、中村剛也に三遊間を破られ、4点目を与えた。味方守備に足を引っ張られたとはいえ、エースとして踏ん張りたいところだった。
7回を投げ終え100球で降板したが、4回以降に出した走者は5回2死から栗山に与えた死球だけ。開幕投手に決まってから、「開幕戦にはしばらく勝っていない。とにかく勝つ姿を見せたい」「とにかく勝ちたい思いが強い」と勝利に強い思いを込めていた。開幕前日も「シーズンの出だしだけに大切な試合。明日は勝つ必要がある」と、有言実行を意識していたが、その責任感の分だけ力が入ってしまったのかもしれない。
この日の先発メンバーのうち、野手で昨季の開幕戦でスタメンだったのは吉田正尚とアダム・ジョーンズだけ。7年目の宗佑磨、佐野晧大を筆頭に、3年目の太田、頓宮裕真、2年目の紅林弘太郎とフレッシュな顔ぶれで臨んだ2021年のオリックス。二遊間に守りのミスも出たが、開幕戦の独特の緊張感の影響もあったことだろう。
打線は6回に吉田正のソロで反撃を開始。7回には頓宮もソロを放ち、8回は紅林、太田が安打でつないで好機を広げ、吉田正の遊ゴロの間に加点した。先頭のジョーンズが安打を放った9回無死1塁からは3者凡退。1点差に泣くことになったが、希望も垣間見えた試合だった。
試合後、山本は「1回に走者を出して、抑えなければと力が入った場面があった。よくないボールもあったが、途中からは修正してガタガタと崩れなかったのは良かった」と投球を振り返り、「今日負けたことは悔しいが、ここから始まる。早く切り替えて次に備えたい」と、前を見据えた。
文●北野正樹(フリーライター)
【著者プロフィール】
きたの・まさき/1955年生まれ。2020年11月まで一般紙でプロ野球や高校野球、バレーボールなどを担当。南海が球団譲渡を決断する「譲渡3条件」や柳田将洋のサントリー復帰などを先行報道した。