高校野球

「西村には負けへん」智弁学園の“右のエース”、小畠一心が見せた4回目の夏の円熟<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.25

今大会、小畠(写真)は今のところ全3試合に登板中。過去2試合は西村に先発マウンドを譲ったものの、いずれも9回に登場して試合を締めくくっている。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 2回以降は無失点。智弁学園の先発、背番号「10」の小畠一心は9回を投げ、球数96。3安打1失点完投勝利を果たし、チームをセンバツに続くベスト8進出に導いた。

「初回に勢いを持って来られなかったのが、今日の反省点です。序盤は苦しい試合展開にはなりましたけど、粘って投げようかなと思いました。四球を出さなければ、球数が多くなることはないと思っています。3ボールもありましたけど、粘れたと思う」

 マウンドさばきと同様に、落ち着いた語り口で小畠は試合を振り返った。

 名門・智弁学園で、小畠は入学直後の2019年春からベンチ入り。現在の最速は145キロだが、それよりも多彩な球種が持ち味だ。カーブ、スライダー、フォーク、ツーシーム。これらの球種をコントロールよく散りばめていく。1年春の高校デビュー戦を観戦したが、各球種のバランスの良さ、そして落ち着いたマウンドさばきは、当時から優れていた。
 
 小坂将商監督は当時、こんな話をしていたものだ。

「セーフティバントが来そうだと思ったら、3年生に指示を出したりする。普通、1年生にはできないですよね。そういったところも含めて、マウンドの振る舞いは抜けている」

 もっとも、そんな小畠も、1年の夏に早くもほろ苦いマウンドを経験している。現在は背番号1を背負う、同期の西村王雅らとともに甲子園メンバー入り。2回戦の八戸光星学院戦では先発マウンドに立ったが、3回途中4失点でノックアウトされ、敗退の要因となってしまった。

 翌年は当然、小畠はこの時のリベンジを目指した。だが、20年は春夏ともに甲子園大会は中止。西村とエースを争いながらも、実戦では結果を出すことができない日々を過ごしたのだった。昨夏の甲子園交流試合には智弁学園も出場したが、小畠の出番はなかった。