高校野球

右ヒジ炎症のため準決勝を登板回避した近江・岩佐直哉。その決断に過密日程の影響はなかったか<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.29

山田とともに勝利の方程式を形成した岩佐。右ヒジ炎症のため、準決勝は登板できないまま終わった。写真:塚本凛平(THE DIGEST編集部)

  彼の右ヒジが軽症であることをただ祈るのみだ。

 これまで快進撃を続けてきた滋賀県代表の近江が準決勝で智弁和歌山に力なく敗れた。

 勝利の方程式を描けなかったのだから仕方ない結果と言えるだろう。エースナンバーをつけた岩佐直哉は登板することなく終わった。

 近江の多賀章仁監督は言う。

「準々決勝の神戸国際戦でかなり悪くなったということ。7、8回、球速が出ていなかったので、あの試合でいっぱいいっぱいでした。今日、ブルペンには行かせましたけど、登板はできない状況でした」

 右ヒジが炎症しているのだという。今後、地元に帰ってから精密検査を受けるのだろうが、2回戦で優勝候補筆頭の大阪桐蔭を撃破、強打の盛岡大付や神戸国際大付にも競り勝ったチームだけに、エースが準決勝で登板回避になってしまうとは残念な限りである。

 大会を席巻した勝利の方程式だった。2年生で主軸を打つ山田陽翔が先発して6、7イニングを投げ、その後を岩佐が受け継ぐ。大阪桐蔭戦では序盤に4失点した山田が6回を志願して投げ切ると「岩佐さん任せました」と交代を直訴したほどだ。
 山田と岩佐の信頼関係は強かった。

 下級生の山田が勢い良く投げ込むことで流れを作り、それを上級生である岩佐が兄貴であるかのようにしっかり勝利に導く。滋賀県大会から続くこの2人のリレーが、甲子園ベスト4まで続く快進撃の原動力だった。

 岩佐は言う。

「完封リレーはできなかったんですけど、僕たち2人で必勝リレーとして4試合を勝てたことは嬉しかったです。今日は投げたかったんですけど、ヒジが痛くて投げられなかったです」

 周知のように、現在の甲子園大会には1週間500球の球数制限がある。そのため、多くのチームは特定の投手に登板が偏らないようなチーム作りを心がけている。事実、ベスト4進出のチームで、エース一人で勝ち上がってきたチームはなかった。

 今の時代の高校野球に複数投手戦は当然の戦略で、過去「三本の矢」と呼ばれた3投手での甲子園準優勝の実績がある多賀監督も、複数投手の戦い方を熟知していた。
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