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高校野球

「今後の高校野球はどちらに進むのか?と問いかけたかった」【『甲子園は通過点です』著者インタビュー:前編】<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.08.31

新潮社から『甲子園は通過点です』を発刊した氏原氏。3年前の前作『甲子園という病』は高校野球ファンを中心に広く読まれ、大きな話題を呼んだ。写真:本人提供

新潮社から『甲子園は通過点です』を発刊した氏原氏。3年前の前作『甲子園という病』は高校野球ファンを中心に広く読まれ、大きな話題を呼んだ。写真:本人提供

 まさに球児たちが甲子園で熱き戦いを繰り広げていた8月18日、『甲子園は通過点です』(新潮社)という衝撃的なタイトルの書籍が発売された。著者は、2018年に発行した『甲子園という病』(新潮社)で話題を呼んだスポーツ・ジャーナリストの氏原英明氏。長年、甲子園を取材してきた氏原氏が、この本に託した高校野球への思いを聞いた。

――『甲子園という病』では、投手の酷使や勝利至上主義など高校野球界に蔓延する病理を問題提起するのがテーマでした。一方、『甲子園は通過点です』は「現在進行形の変革の波」に焦点を当てています。3年前と現在で、高校野球は変わってきたと思われますか?

「そうですね。大きく変わってきたというわけではないんですが、地殻変動というか、前向きな動きが少しずつ現れてきていると思います。指導者の皆さんも、球児の皆さんにも、『これからどの方向に行くべきか?』というのを考えてほしいなと思っているんですよね」

――「どちらに進むか?」というのは、選手ファーストで改革に邁進していくべきか、それとも今まで通りのままにするかということですよね?

「そうです。ただ、今までは何もなかったのが、少しずついろいろなことが起こっている。『甲子園は通過点です』では、その動きをいろいろと紹介しました。その上で、読み終わった時に『みなさん、どちらを選びますか?』という問いかけをさせてもらいました。まず、一番の目的は改革の動きがあるということを伝えたかったんです。こうした動きを知らない人もたくさんいると思うので。その上で、『どちらに動きますか?』という問いかけをするのが、この本を書いた目的でした」
 
――3章では、今大会で全国制覇を果たした智弁和歌山・中谷仁監督の国体での木製バット使用や「全選手を戦力にする」起用法、また6章では、花巻東と新潟明訓が「坊主頭をやめた理由」などの取り組みが取り上げられています。こういった強豪校が改革の先鞭をつけることの意義は大きいのでしょうか? 

「改革の入り口はどこか、流れを促進したのはどこか……というのは、正直答えはないと思います。ただ、智弁和歌山は『甲子園では結果を残しているが、プロで活躍する選手が少ない』と世間では言われていますよね。その一因として『金属バットに慣れているから』という声があります。だからこそ、国体で木製バットを使用した意味は大きいと感じたんです。そこで、中谷監督がそこまで先を見ている人だと気づいた。

 それで中谷監督に注目していたのですが、甲子園の采配を見ていても継投がめちゃくちゃ面白いんです。こういう使い方をするのか、と思わされることが多い。そうしたところを見ていて、まず智弁和歌山の改革の動きは大きなメッセージになると感じて取り上げました。

 花巻東も一時期は選手の管理が厳しいと言われていただけに、丸坊主を廃止したというのは大きな動きですよね。それに新潟明訓も新潟県の高校野球を引っ張っている名門校なので、その学校が『今までの当たり前』から脱したことは、県全体へのメッセージになったと思います。

 また、花巻東はOBに大谷翔平(現エンジェルス)や菊池雄星(現マリナーズ)がいて、彼らの能力が高いから育ってるんだと言われたりもしますが、それは間違いです。確かに大谷も菊池も優れた能力を持っていましたが、本来は彼らの取り組みというか、成功をイメージして、目標から逆算して日頃の行動を決めていくところが本当の凄さなんです。その原点になったのが花巻東なんです。

 この姿勢は野球選手だけでなく他のアスリート、ひいては我々のような一般人にも通じる話だと思います。花巻東の佐々木洋監督がどのような考え方で大谷や菊池の指導にあたったのかということも本には書いてあるので、そこも一つのメッセージとして伝えたかったですね」
 
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