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プロ野球

パ・リーグ”冬の時代”を支えた名作『あぶさん』。実在のスターの個性と魅力を克明に描いた「事実を下敷きにした面白さ」<SLUGGER>

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2022.01.21

『あぶさん』の主人公・景浦(左)と水島氏(右)。景浦の背番号90は実際のホークスでも準永久欠番扱いとなっている。写真:産経新聞社

『あぶさん』の主人公・景浦(左)と水島氏(右)。景浦の背番号90は実際のホークスでも準永久欠番扱いとなっている。写真:産経新聞社

 1月10日、漫画家の水島新司氏が肺炎のため亡くなった。82歳だった。

 60年以上も漫画を描き続けた水島氏には多くの作品がある。代表作にはよく『ドカベン』が挙げられるが、僕は『あぶさん』が一番好きだった。

『あぶさん』は、南海(のちに福岡ソフトバンク)ホークスの呑べえの代打男・景浦安武(かげうら・やすたけ)の野球人生を描いた作品だ。1973年から2014年まで約41年にわたって続いた史上最長のスポーツ漫画で、単行本は全107巻、総発行部数は2200万部を突破している。

 タイトルはヨーロッパ由来の酒アブサン(景浦が初登場時に飲んでいる)から取ったもので、主人公・景浦のニックネームでもある。大酒飲みで1試合にフル出場する体力がない代わり、代打ですさまじい集中力を発揮し、特大のホームランをかっ飛ばすのが景浦という男だった。
 
 40代後半で3年連続三冠王を獲得したり、60歳で史上初の打率4割を達成するなど、連載後半は現実離れした展開になってしまったが、代打に徹していた頃の『あぶさん』はそのリアルさも魅力だった。

 二軍落ちすることもあったし、頻繁にトレード話も持ち上がった。30代後半の頃には不振もあって引退勧告を受け、結局自由契約になってしまったこともある(その後、入団テストを受けて南海にもう一度入団する)。引退か現役続行かで悩む景浦の姿には、プロ野球の世界のシビアさがリアルに描かれていた。

 景浦のキャラクター設定にも、細部にわたってモチーフがあった。姓は戦前に阪神で活躍した景浦将から。打撃フォームは通算465本塁打を放った元近鉄の主砲・土井正博を模倣している。愛用の1mバット“物干し竿”は、“初代ミスター・タイガース”藤村富美男へのオマージュであり、酒豪ぶりは元近鉄の永淵洋三をモデルとしている。事実を下敷きにしているからこそ、キャラクターも真に迫っていた。 
 

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