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大谷翔平の隣にあった闇――。若手左腕の死をめぐる裁判で見えてきたエンジェルス薬物乱用の実態<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.02.14

オピオイド中毒によって19年に死去したスキャッグス。その死の裏側にある闇が、今明らかになろうとしている。(C)Getty Images

オピオイド中毒によって19年に死去したスキャッグス。その死の裏側にある闇が、今明らかになろうとしている。(C)Getty Images

 現地時間2月8日、テキサス州の連邦裁判所で、エンジェルスの闇を暴く裁判が始まった。2019年にエンジェルスの投手タイラー・スキャッグスが急死する原因となった薬物を提供した罪に問われた元広報部長エリック・ケイの審理だ。

 事件は19年7月1日深夜に起こった。敵地でのレンジャーズ戦を控えたこの日、スキャッグスは宿泊していたホテルの自室で意識不明の状態で発見され、病院に搬送されたが死亡が確認された。

 スキャッグスは、当時まだ27歳だった。速球とカーブ、チェンジアップが武器の左腕で、投手陣の良きチームリーダーでもあった。もし夭折していなければ、今も大谷翔平と並んでエンジェルスのローテーションを支えていただろう。

 調査の結果、スキャッグスは自身の嘔吐物を喉に詰まらせたための窒息死であると判明。それはオピオイドとアルコールを同時服用による中毒症状が原因だった。もともとは医療用麻薬であるオピオイドは近年、多くの依存症患者を生み出し、過剰摂取による死者が交通事故の死者を上回るなど深刻な社会問題化している。

 事件から約3か月後、オピオイドをスキャッグスに提供していたとして、ケイが逮捕、そして起訴された。これまでの取り調べで、同氏は17年からスキャッグスへオピオイドの提供を認めていた。

 だが、8日の裁判では、スキャッグスが事件当日に所持していた薬物の一部に、自分以外の人物から渡されていたものがあったと主張。そしてその薬物は、当時エンジェルスに所属していた元オールスター投手のマット・ハービーがスキャッグスに渡したと告発したのだ。
 
 かつてメッツで本格派エースとして人気を博し、アメコミのスーパーヒーロー「バットマン」になぞらえて“ダークナイト”と呼ばれたスターの名前が出たため、球界では衝撃が広がっている。ハービーは今後の公判で証人として出廷する予定だ。

 ハービーの他にも、アンドリュー・ヒーニー(現ドジャース)、ギャレット・リチャーズ(現レッドソックス)、CJ・クロン(現ロッキーズ/昨季広島でプレーしたケビン・クロンの兄)ら6選手が証人リストに名を連ねている。

 9日にはヒーニーが出廷し、以前スキャッグスと一緒にマリファナを吸っていたと証言。だが、オピオイドの使用については「知らなかった」とした。また、スキャッグスの母親も証言台に立ち、本人が13年にもオピオイドに手を出していたが、一度は使用をやめていたと語った。

 ケイは、エンジェルスでスキャッグス以外の選手にも薬物を提供していたと認めていて、今後の公判で実名を公表する意向だという。また、エンジェルスの審判用クラブハウスの従業員ヘクター・バスケスがケイの薬物供給源のひとりだったとも証言している。

 言うまでもないが、大谷の元チームメイトだ。彼のホームランを目の当たりにしたスキャッグスが、興奮のあまりダグアウトで思わずダンスを始める映像が話題を集めたこともある。死の直前には、大谷とヒーニーで他のチームメイトのオールスターファン投票を促すPR動画も撮影していた。

 だが、大谷自身はもちろん知る由もなかっただろう。だが、スキャッグスは、いやエンジェルスは、底知れない闇を抱えていた。その闇の実態が、裁判で明かされようとしている。

構成●SLUGGER編集部

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