ついに、ついに、この時がやってきた。MLB機構と選手会は現地3月10日、新たな労使協定に合意し、4月7日のシーズン開幕が決定。昨年12月2日から続いていたロックアウトが99日間で終了することになった。新たな労使協定の下、いくつかの制度変更・新制度導入が決まった。主な変更点を解説していこう。
●プレーオフ枠の拡大
プレーオフ進出チームを従来の10球団から拡大することに関しては、当初からオーナー側も選手会側も同意していたが、さらなる収益拡大を目指すオーナー側は14球団、レギュラーシーズンの価値を担保したい選手会は12球団を主張。最終的には選手会の主張が認められた。
今年からは、各リーグの地区優勝3チームと、2位以下の勝率上位3球団がプレーオフ出場権を手にする。具体的なフォーマットとしては、地区優勝チームのうち勝率上位2チームは最初のラウンドのシード権が与えられ、残りの4チームが3戦制のワイルドカード・シリーズを戦う。MLB機構は当初、上位チームにいわゆるアドバンテージ1勝を与える案を提示したが選手会が拒否し、フラットな形で勝敗を決めることになった。
●ボーナス・プール制度の導入
メジャー経験3年未満の選手の年俸が不当に低く抑えられている現状を改善するため、あらかじめ一定の金額を各球団が拠出(プール)し、特に輝かしい活躍を見せた選手にボーナスとして支給する制度が新たに導入される。
プール金額をめぐっては、選手会が当初1億500万ドル、オーナー側が1000万ドルと隔たりが大きかったが、最終的にほぼ中間地点の5000万ドルで同意に至った。
対象となるのは年俸調停取得前の選手で、かつ好成績を収めた上位20%=100人前後の見込み。勝利貢献度を示すセイバーメトリクス指標WARを基に選出される。また、MVPやサイ・ヤング賞を獲得すると275万ドル、投票2位に入ると175万ドルというように、5位以内まで100万ドル以上のボーナスを手にすることができる。新人王獲得のボーナスは75万ドルになる。
●戦力均衡税/最低保証年俸の引き上げ
総年俸が一定の額を超えたチームに「税金」を課す戦力均衡税、いわゆるぜいたく税の課税ライン引き上げは、今回の労使交渉で選手会が最重要視していた問題の一つだった。昨年の課税ラインは2億1000万ドルだったが、上限が高くなればそれだけ選手年俸上昇につながると考えられるため、選手会は22年が2億3800万ドル、そこから徐々に金額が上がり、最終年の26年に2億6800万ドルとする案を要求していた。
これに対し、オーナー側は昨季の2億1000万ドルから1000万ドル増額の2億2000万ドルを起点として5年間でほぼ横ばい、最終26年も2億3000万ドルとかなり大きな隔たりがあった。他の案件では多少の譲歩は見せてきたオーナー側も、戦力均衡税に関しては強い抵抗を見せていた。だが、最終的に初年度(22年)2億3000万ドルまで譲歩。最大2億4400万ドルまでの引き上げで合意している。
●ユニバーサルDH導入
アメリカン・リーグでは1973年から指名打者(DH)制度が導入されていたが、今季からナショナル・リーグも同様にDH制を採用。両リーグの足並みが揃うことになった。
これにより、ナ・リーグにもDH制が導入されることになり、これまでナ・リーグの本拠地球場では代打での出場に限られた大谷翔平(エンジェルス)もフル稼働できることになる。ナ・リーグ15球団に野手の枠が一つ増えることから、選手会はベテラン選手の待遇改善につながることも期待している。
●ドラフト・ロッタリーの導入
ドラフト制度も大きく変わる。ロッタリーとは抽選を意味し、ドラフト指名順位を決める際にくじ引きを用いる制度。NBAでは以前から導入されている。
MLBのドラフトは、前年の勝率ワーストチームから順に指名権が割り当てられていたが、このことが半ば意図的にチームを低迷させる「タンキング」横行の温床となっていた。しかし、ドラフト・ロッタリー導入によって、低迷球団でも自動的に上位指名権が獲得できるわけではなくなる。タンキング抑制と戦力補強への動機付けを高めることが狙いだ。
NBAでは、ドラフト全体5位指名までが抽選の対象で、くじに参加できるのはプレーオフ出場を逃した14チーム。勝率の低いチームが1位指名権を獲得しやすいよう調整されているものの、中位クラスのチームにもチャンスは残されており、“わざと”負けることへの抑止作用が働いている。
くじ引き対象となる順位をどこまで広げるかに関してオーナー側は4球団、選手会は8球団を主張していたが、最終的に折衷案の6球団で決まった。
構成●SLUGGER編集部
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●プレーオフ枠の拡大
プレーオフ進出チームを従来の10球団から拡大することに関しては、当初からオーナー側も選手会側も同意していたが、さらなる収益拡大を目指すオーナー側は14球団、レギュラーシーズンの価値を担保したい選手会は12球団を主張。最終的には選手会の主張が認められた。
今年からは、各リーグの地区優勝3チームと、2位以下の勝率上位3球団がプレーオフ出場権を手にする。具体的なフォーマットとしては、地区優勝チームのうち勝率上位2チームは最初のラウンドのシード権が与えられ、残りの4チームが3戦制のワイルドカード・シリーズを戦う。MLB機構は当初、上位チームにいわゆるアドバンテージ1勝を与える案を提示したが選手会が拒否し、フラットな形で勝敗を決めることになった。
●ボーナス・プール制度の導入
メジャー経験3年未満の選手の年俸が不当に低く抑えられている現状を改善するため、あらかじめ一定の金額を各球団が拠出(プール)し、特に輝かしい活躍を見せた選手にボーナスとして支給する制度が新たに導入される。
プール金額をめぐっては、選手会が当初1億500万ドル、オーナー側が1000万ドルと隔たりが大きかったが、最終的にほぼ中間地点の5000万ドルで同意に至った。
対象となるのは年俸調停取得前の選手で、かつ好成績を収めた上位20%=100人前後の見込み。勝利貢献度を示すセイバーメトリクス指標WARを基に選出される。また、MVPやサイ・ヤング賞を獲得すると275万ドル、投票2位に入ると175万ドルというように、5位以内まで100万ドル以上のボーナスを手にすることができる。新人王獲得のボーナスは75万ドルになる。
●戦力均衡税/最低保証年俸の引き上げ
総年俸が一定の額を超えたチームに「税金」を課す戦力均衡税、いわゆるぜいたく税の課税ライン引き上げは、今回の労使交渉で選手会が最重要視していた問題の一つだった。昨年の課税ラインは2億1000万ドルだったが、上限が高くなればそれだけ選手年俸上昇につながると考えられるため、選手会は22年が2億3800万ドル、そこから徐々に金額が上がり、最終年の26年に2億6800万ドルとする案を要求していた。
これに対し、オーナー側は昨季の2億1000万ドルから1000万ドル増額の2億2000万ドルを起点として5年間でほぼ横ばい、最終26年も2億3000万ドルとかなり大きな隔たりがあった。他の案件では多少の譲歩は見せてきたオーナー側も、戦力均衡税に関しては強い抵抗を見せていた。だが、最終的に初年度(22年)2億3000万ドルまで譲歩。最大2億4400万ドルまでの引き上げで合意している。
●ユニバーサルDH導入
アメリカン・リーグでは1973年から指名打者(DH)制度が導入されていたが、今季からナショナル・リーグも同様にDH制を採用。両リーグの足並みが揃うことになった。
これにより、ナ・リーグにもDH制が導入されることになり、これまでナ・リーグの本拠地球場では代打での出場に限られた大谷翔平(エンジェルス)もフル稼働できることになる。ナ・リーグ15球団に野手の枠が一つ増えることから、選手会はベテラン選手の待遇改善につながることも期待している。
●ドラフト・ロッタリーの導入
ドラフト制度も大きく変わる。ロッタリーとは抽選を意味し、ドラフト指名順位を決める際にくじ引きを用いる制度。NBAでは以前から導入されている。
MLBのドラフトは、前年の勝率ワーストチームから順に指名権が割り当てられていたが、このことが半ば意図的にチームを低迷させる「タンキング」横行の温床となっていた。しかし、ドラフト・ロッタリー導入によって、低迷球団でも自動的に上位指名権が獲得できるわけではなくなる。タンキング抑制と戦力補強への動機付けを高めることが狙いだ。
NBAでは、ドラフト全体5位指名までが抽選の対象で、くじに参加できるのはプレーオフ出場を逃した14チーム。勝率の低いチームが1位指名権を獲得しやすいよう調整されているものの、中位クラスのチームにもチャンスは残されており、“わざと”負けることへの抑止作用が働いている。
くじ引き対象となる順位をどこまで広げるかに関してオーナー側は4球団、選手会は8球団を主張していたが、最終的に折衷案の6球団で決まった。
構成●SLUGGER編集部
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